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2007.12.10 20:04

玄関ホールを通ろうとしたら執事のトムキンスが何か小さな箱を持っていた。どうやら今しがた受け取ったばかりのようだ。
小さなそれは白い箱で可愛らしくりぼんでくくられていた。
最近そういったものをよく目にしているリディアは今回のそれもどんなものか容易に想像することができた。


「今度はなんだろうね」
エドガーは自室で興味津々とばかりに目の前の箱を眺めている。
机の上に置かれた箱は手のひらにのるくらいに小さなもので可愛いりぼんがかけられていた。
青騎士伯爵が婚約した―
この事実により届けられる贈り物はこれが初めてではない。
人間の贈りものと違って不思議な曰くつきなものも含まれていて、エドガーはそんな一風変わった贈り物を面白がっているようにも見えた。
「この間散々な目にあったのにちっとも懲りてないのね。」
呼ばれたリディアは今にも箱を開けそうなエドガーに対して注意を促す。
「だって嬉しいじゃないか。みんな僕とリディアの結婚を祝福してくれてるんだよ。」
「そうね。それは嬉しいけれど・・・・・」
「だったら、ほら。・・・・あ、何かメッセージが添えられてる」
りぼんのむすびのところに添えられていた小さなカードをエドガーが取り出す。
「また危険とか書いてあるんじゃないでしょうね」
先日うっかり使用してしまったとある種のせいで巻き起こった事件は記憶に新しい。
「えぇと。『必ず男性の手で開けるべし』だって。」
「へ?」
「へぇ、男性の手でか。」
「エドガー様。だったら自分が開きます」
そこにいままで黙って成り行きを見守っていた従者レイヴンが名乗りを上げる。
「あぁ、頼むよレイヴン」
エドガーはレイヴンに小さな贈りものを手渡す。
「ちょっと、エドガー本当にあけるの?」
「特に危険なものでもなさそうだし。妖精の贈りものならリディアだって詳しいだろう。大丈夫だよ」
その自信はどこからでてくるのよ。
リディアはなおも心配そうに見守る。
ほどなくして開いた箱の中からは美しくカットされた硝子の小瓶が姿を現した。繊細にカットされた硝子は光をあびてきらきらと輝いている。
手のひらに乗るそれの中には美しく繊細に輝く液体が入っていた。
「なんだろうね」
レイヴンから手渡された小瓶を光にすかしながらエドガーはつぶやく。
この間の種といい妖精の贈りものは一見しただけではまるで用途がわからない。
「リディアはこれがなんだかわかるかい?」
話を振られてリディアはエドガーの手にある小瓶をまじまじと見つめる。
「んんー。見ただけじゃわからないわ」
そう言ってリディアは何かヒントがないものかと空っぽになった箱を手に取る。衝撃よけの綿の隙間に何かの切れ端を見つけて取り出す。
「なにか、書いてあるわ。えぇとね・・・『青騎士伯爵様、ご婚約おめでとう御座います。我が一族もこたびの伯爵様のご婚約心からお祝い申し上げます。またお祝いの品として我が一族に伝わる秘伝の媚薬をお贈りいたします。どうぞこちらをお使い1日も早いお子様のご誕生を・・・・・』・・・・・・ってなによこれ!!」
雲行きが怪しくなってきたメッセージをリディアは途中まで読んで叫んだ。
まったく先走りにも程がある。
なにがお子様の誕生だ。まだ婚約したばかりであるしまだまだ実感の沸かないリディアにとって見れば結婚の、しかもその先の子供なんて雲を掴むくらいに現実感の湧かない話だった。
そんなものを男性の前で読み上げてしまった羞恥心にリディアは真っ赤になる。
「なるほど。妖精たちも分かっているじゃないか。だから男性限定であけろなんて書いてあったのか。」
何時の間にやってきたのかエドガーがリディアからメッセージカードを取り上げてしげしげとそこにかかれてある文字を目で追う。
随分と早計な妖精だがエドガーにしてみれば悪くない贈りものだ。
「ねえ、これをリディアに使ったらリディアは僕に対して積極的になってくれるのかな」
何時の間にか側によるだけから腰に手をまわされエドガーの端正な顔がリディアの間近に迫っていた。
「ちょっと、何をいってるのよ。そんなよくわかりもしないものを使うなんてどうかしてるわ」
リディアはこれ以上雲行きが怪しくならないようにと出来るだけ冷静にエドガーを諭そうとする。
いくら婚約して、エドガーが好きと認めたってそんなものを使われるのはごめんだった。
「妖精たちだって僕たちの事を祝福してくれているんだ。焦らす君もとても魅力的だけどたまにはリディアのほうから僕にせまってほしいな」
間近に迫ったエドガーの吐息が耳を掠める。
リディアは自分の顔が火照るのを感じ取る。
止めて欲しい、けれどもこのまま―
そんな自分の心に戸惑って反射的にどん、とエドガーの胸を手で撥ね退けてしまう。
「そんなことできるはずがないでしょう!」
ようやくそれだけいうとくるりと踵をかえして部屋からでていく。
残されたのはエドガーとレイヴンだけ。
静けさの中にエドガーがふっと笑みを浮かべる。
「ねぇレイヴン想像して御覧よ。リディアから迫ってくるなんて。考えただけで胸が掻きたてられるよね」
「・・・・・・いえ、自分は」
どうして自分に話を振るのか。返答に困っているとエドガーはさらに言い募ってくる。
「で・・・?レイヴン。想像した?」
「いえ、自分にはリディアさんから積極的にエドガー様に迫る様子がどうしても想像できません」


「んもう!エドガーの馬鹿!」
自室に戻ったリディアはばふんと勢いよくソファに腰掛ける。
その反動でクッションが少しずれるが今回ばかりは気にしていられない。
よりにもよって媚薬など贈られてくるとは。
「なんだよ、リディアえらくご立腹じゃないか。さては伯爵のやつ浮気でもしたか」
二つ足で器用に窓から飛び降りたニコが向かい側の一人掛けに腰掛ける。
「そ、そんなんじゃないわよ!」
「だったら何でそんなに怒ってるんだ。」
「別に・・・・・・何でもないわよ」
そう、なんでもないのだ。
エドガーの何時もの口説きじゃないか。こんなものにいまさら動揺してどうすると自分にいい聞かせる。
静まれ心臓しずまれ自分と。
いまさらエドガーに対して動揺している場合ではない。
こんなときエドガーがどういった行動に出るかなんてこの間からの騒動を見ていればすぐに分かるものだ。
だったら一番危険なのは自分ではないのか。
「こうしちゃいられないわ。ニコ、今日は帰るわよ」
結論に達したリディアはすくっと立ち上がり簡単に荷物をまとめ始める。
「えぇっ。まだお茶だって飲んでないのに」
伯爵邸で出される高級紅茶と茶菓子を楽しみにしているニコは抗議の声を上げる。
「あっそ。いいわよ一人で帰るから」
薄情な妖精猫はほっておいてリディアは一人そうっと伯爵邸を後にした。
まったく、見つかったら強引に連れ戻されるに決まっている。
用心に越したことはないのだ。


「なんだって。リディアは帰ってしまったのかい?」
ディナーに誘いにきたエドガーは部屋に一人いたニコからリディアが早々に自宅へ帰ってしまったという事実を聞かされていた。
「なんかひどく慌てていたぞ」
あっけらかんというニコにエドガーは思い当たる節がありすぎて口をつぐむ。
「どうせ伯爵がなにかしたんだろう。浮気でもばれたか?」
「聞き捨てならないなニコ。僕は何時だってリディア一筋だよ」
「だったらどうしてあんな怒って帰ったりしたんだ」
浮気はしていないが心当たりが無いわけでもない。
いや、あのあと逃げるように帰ったというならば原因はあの贈りものしかないだろう。
「エドガー様もしやあの小瓶が原因では」
レイヴンが控えめに意見を口に出す。
レイヴンの目からみても思い当たる原因はあれしかなかった。いつものエドガーの冗談だと分かっているはずなのにリディアはなにをそんなに怒ったのだろうとレイヴンは訝しがる。
「なんだ小瓶って」
「あぁ、実は・・・・」
そういってエドガーは昼間の贈りものについて軽くつまんで説明した。
「そんなこといったのか?そりゃリディアだって身の危険を感じて逃げるわな」
「・・・・ニコそんなはっきり言わなくてもいいじゃないか。ほんの冗談のつもりだったんだ。僕はどっちかというと迫られるより自分から迫る用が好きだし。あぁでもリディアから迫られるなんていうのも悪くないから使ってみたくないって言われたらウソになるかもだけど」
「エドガー様本音がでています」
「まったく呆れるぜ」
「二人とも聞き捨てなら無いね。好きな女性から迫られたいって言うのは男性に共通している願望だよ。」
「それはあんただけだよ」
こんなやつの婚約者をやっているリディアも大変だな。ニコはそう心の中でごちるのだった。


いくら昨日のことがあろうともリディアはアシェンバート伯爵家のフェアリードクターだから仕事を休むわけにも行かない。それに父に余計な心配もかけたくないから本当はあまり気が進まなかったけれどもリディアは伯爵邸へと赴いた。
本音を言えばいつエドガーが例の媚薬を使ってくるかわからなかったのでほとぼりが冷めるまで距離をおきたかったのだが。
「なぁ、本当に行くのか?絶対伯爵のやつリディアに例の薬を使ってくるぞ」
なぜか昨日の一件を知っているニコまでも道すがら忠告をしてくる。
「もう。なんでニコまでが知ってるのよ。関係ないわ、私はフェアリードクターだもの。ただ仕事をしにいくだけよ」
「向こうはそうは思ってないかもしれないぜ」
「そうかもしれないわね!」
だからなにとばかりにリディアはキッと相棒の妖精を睨みつける。
「まぁせいぜいやつから出される食事や飲み物には注意することだな」
「それはご丁寧にありがとう!」



後編へ続く☆☆ ☆☆
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テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

タグ : 伯爵と妖精 二次小説 エドリディ

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| | | 2007.12.10 22:23 |

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| | | 2009.07.24 22:22 |

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