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2007.12.11 21:19

まったく二コまでなんなのよ、絶対に面白がっているんだわ。リディアは薄情な相棒に毒づきながらアシェンバート伯爵邸の廊下を突き進む。
道すがらのやりとりに腹が立っていて近づいてくる影に気付く様子もなかった。


「おはよう、今日も綺麗だね。僕の妖精」
一呼吸気付くのが遅れたおかげで気がつくとリディアはエドガーの腕の中にすっぽりとおさまっていた。
自然に見詰め合う状況に陥ってしまう。リディアの瞳の中煮はアッシュモーヴの瞳が映し出されていた。
「お、おはようエドガー。今日も元気そうね」
とりあえず当り障りの無い挨拶でお茶を濁す。リディアにしてみれば精一杯の虚勢だ。
それに昨日の一件が頭から離れなくてリディアは自分が思っている以上に体をこわばらせていた。勿論腕に収めているリディアの反応などはすぐにエドガーに伝わった。
そのリディアの様子に触発されてエドガーもついリディアに対して過剰に反応してしまう。頬に手を沿えリディアを見つめる表情は何時にもまして魅惑的だ。
「エ、エドガー離して。」
やっとのことでリディアは声を絞り出す。
「どうして?君は昨日も早くに帰ってしまって僕は今日君に会いたくて会いたくてしょうがなかったんだ」
「そ、そんなこと言われても・・・、昨日はだって・・・・」
色々あったからとリディアはなんとか反論しようと試みるがどうにも気恥ずかしくってその先が言えなかった。自分から媚薬云々という言葉は紡ぎだしかねるのだ。
「あぁ例のこれのこと?」
エドガーは大して気にもとめない自然な仕草でポケットから見事なカットをされた小瓶を取り出す。キラキラ輝いている、光の結晶のような美しい細工のものは間違いなく昨日伯爵邸へ届けられた妖精からの贈りもの。
「な、なんでエドガーのポケットからでてくるのよ」
リディアは行きのニコの忠告を思い出していた。食べ物どころかこの状況だったら直接飲まされそうだ。
「なんでって。僕の知らない間に他の誰かがリディアにこれを飲ませて可愛らしくリディアが僕以外の男と仲良くしている姿なんて見たくないからね」
「そんなもの誰が私に飲ませるって言うのよ!」
「リディアはとても魅力的だからね。もしかしたらっていうこともありえるじゃないか」
なにやら雲行きが怪しくなってきたとリディアはなんとかエドガーの腕から逃れようとするがなかなか逃れることができない。
再度ポケットに媚薬をしまいこんだエドガーはリディアの頬に手を添える。
「エドガー、ここは廊下よ離して」
「大丈夫。みんな心得ているから誰もこないよ」
やっとのことであげた抗議の声もエドガーにかき消されてしまう。
確かに婚約したけれども、結婚すると決めたけれど。まだまだ現実的に実感のわかない、こういうことに慣れていないリディアは恥かしさで顔を真っ赤にしてしまう。
「ああリディア。コレを飲んだらもっと僕に対して積極的になってくれる?」
それを飲んだら自分はエドガーに対してもっと積極的になれるのだろうか。エドガーも可愛いと思ってくれるのだろうか。
だけどそれはリディアの意思ではない、薬の力だ。
そんなの嫌―
反射的に、渾身の力でもってエドガーの胸を突き飛ばす。
だって、薬なんか使ったらそれはもうリディアの想いでも何でもない。だから今はここから逃げなければ。さきほどのニコの忠告も頭の中でぐるぐると渦巻く。
「エドガーの馬鹿!もう知らない!!」
無我夢中でエドガーから遠ざかって、でも頭は妙に冴えていて。どうしてあんなきつくしか言えないんだろう。だからエドガーもあの薬を使いたがったかもしれない。もっと普段から可愛くなれればいいのに。
そうしたらエドガーだってあんな薬に頼りたくなんてならないのに。
パタンと静かに仕事部屋のドアを閉める。自己嫌悪で一杯だ。今日は仕事に手がつきそうもないかもしれないとぼんやりとリディアは考えた。


あんなことがあっても仕事を放り出すわけにもいかずリディアはその後もきちんと伯爵邸へ足を運んでいた。
ただしエドガーと面と向かって会う気にはなれずなるべくなら会わずに済むように細心の注意を払っていたけれども。
リディアの挙動になにか想うことがあったのか執事のトムキンス氏なども気にかけるような様子を示してくれたがこればかりは詳細を述べるわけにもいかずただただリディアは曖昧に頷いたり微笑んでやりすごしてきた。
婚約したのに自分がこんなのでは周りだって心配してしまう。
それは分かっているけれどもどうしてもリディアは考えてしまう。あの媚薬の事を。
エドガーはやっぱり面白がっているだけなんだろうか。だけれども何時までたっても可愛くなれないリディアに我慢の限界点まできているのかもしれない。
だから渡りに船とばかりにあの媚薬を嬉々として受け取ったのか。
やっぱり私なんか・・・・・。リディアは先ほどから一連のやりとりを思い出しながら自己嫌悪に陥っていた。
結局リディアが可愛くなれないのが原因じゃではないのかと―
「ダメだわ。ちっとも集中できない」
机に向かっていると集中しようとすればするほど頭の中には別の考え事が一点の染みのほうにスゥっと広がっていってしまう。
先ほど取り出した紙の上には何時の間にかぐちゃぐちゃとした線が引かれていた。リディアも気がつかないうちに書きなぐっていたらしい。
これでは領地から届いた妖精がらみの相談にきちんとのってあげられる気がしない。
せっかくの、フェアリードクターとしての仕事なのに、頭の中からはあのエドガーの事が離れない。
うーんと椅子に座ったままで伸びをしてふと窓の外をみやる。
「でも・・・・このままじゃいけないわよね」
ぽつんと独り言を紡ぎだす。
何時までも意地を張り通すわけにもいかないのはリディアだって分かっているのだ。
というより問題は諸悪の根源である今回の贈りものをどうするか―
いや、それよりも―
リディアがある考えをめぐらしていると扉から小さく音が鳴った。
遠慮がちにも聞こえたそれはしかしもう一度、今度はしっかりとリディアの耳にも入った。
「はぁい。」
扉から現れたのは黒髪の少年。
レイヴンだった。レイヴンはいつもとかわらない表情でリディアの前に立っている。
「なぁに、レイヴン」
「はい、エドガー様からお茶にいらしてほしいとおおせつかっています」
うっ、とリディアは思わず怯んでしまう。なにしろつい先ほど用心しなくちゃとい意気込んだばかりなのだ。
リディアが何を言おうか逡巡しているとレイヴンはなおも言い募る。
「近頃リディアさんと過ごす機会が無かったのでエドガー様はとても落ち込んでいます。」
「そ、そう・・・・」
「今日もまた会えないと僕は悲しみのあまり何をしでかすか分からない、いっそのことレイヴン君が女装でもして僕を慰めてくれないか。キャラメル色のかつらをかぶってと私におっしゃいました」
「・・・・・・・・えっと」
思わずリディアはその場で固まってしまう。次に続く言葉がでてこない。
「それエドガー本気で言ってるの?」
ようやく気を持ち直したリディアは恐る恐るレイヴンに尋ねてみる。
「エドガー様はいつでも本気です」
そういうレイヴンの表情は淡々としているが微妙に頬の辺りがこわばっているように感じる。レイヴンでもさすがに女装だけは遠慮願いたいのかリディアを見つめる瞳にはいつもには見られないほどの強さが感じられた。
まさか本当にレイヴンに女装をさせるはずは無いだろうとリディアは思うがあのエドガーだからこそやるかもしれないとも思う。
正面にはレイヴンがリディアを見据えている。
何時までも逃げ切れるわけにはいかないようだ。彼に理不尽な女装をさせないためにも、そしてリディアのためにもここら辺で一度エドガーときっちりと話をつけなければいけないようだった。
「分かったわ。一緒に行くわ」


さてエドガーはちょっとした行き違いから意地を張り込んでしまった婚約者のつれない態度にすっかりやさぐれていた。
怒ったリディアが自分をまっすぐに射抜く姿はこれはこれで自分だけの特権かななんて思ってはみるもののやはり避けられているのは辛すぎる。
妖精の贈りものが男性に対する戯れだったのかこれはこれで趣向を凝らした面白いものだったとエドガーは思ったものだがやはりリディアはお気に召さなかったものだ。
うっかりリディアが一緒にいるときに開けてしまったのもまずかったのだろう。
しかしはやり男性としてはいとしい彼女にどういった効果をもたらすのかといった興味もあってあんな行動に出てしまった。
しかしリディアに避けられるのもそろそろ限界だったからレイヴンをつついてみた。
女装など絶対にごめんだと感じているはずの彼の従者ならば必ずリディアをエドガーの元に導いてくるだろう。
果たしてその予想は見事に当たった。
控えめなドアを鳴らす音と共にレイヴンに連れられたリディアが部屋に入ってきた。
「やあリディア。数日間君を僕の瞳の中に閉じ込めることが出来なくて僕はとても辛かったよ」
立ち上がって大げさに両手を広げ自分のもとに近寄ってくるエドガーは何時もと同じ微笑をその端正な顔に浮かべている。
リディアの腰に手を当ててソファへとエスコートをする。
こぽこぽと淹れられる紅茶の音を聞きながらぼんやりとリディアは眺めていた。成り行きでエドガーの部屋へと来てしまったはいいけれどもこのあとどうしよう考えあぐねていたのだ。
美しい琥珀色の液体はとてもかぐわしい香りを放っている。
いつものリディアが気に入っている茶葉にいくつかの焼き菓子やスコーン。添えられたクリームや果実のジャムもリディアの好みのものばかりだ。
いくらかぐわしい香りを放っていようともどうしてもエドガーから出されたものに手をつける勇気がいまのリディアには無かった。
リディアが手を出せずにいるとエドガーはさっと自分のカップを手に取り口にする。
「どうしたのリディア。リディアの好きなものばかり用意させたんだ」
何に心配しているかなんて少し考えればわかりそうなものなのに何を平然といっているのだろうか。
リディアはジトッと横目でついエドガーを睨みつけてしまう。
「あぁもしかして媚薬が入っているんじゃないかって警戒してる?大丈夫入れてなんかいないよ。現にほら僕だって同じポットから淹れられた紅茶を今こうして飲んでいるわけだし、お菓子だって同じだよ」
「な、なによ。そんなこと警戒していないわよ。失礼ね、飲めばいいんでしょう」
先回りをしたエドガーの言葉についリディアはムキになって反論してしまう。結局は上手く紅茶に手をつけさせられたのだ。
これではさっきからエドガーの思うつぼではないかとリディアが一口飲んだカップを両手で持ち俯いているとエドガーがカップを置いた。
気がつき目線を上げてみるとエドガーの手がリディアの手に触れていた。
ゆっくりと紅茶のカップをテーブルの上に戻す。
「そんなに警戒しないで。リディアがこれに過敏になっているのは分かってる。だけれどもだからって僕を避けたりしないでほしいんだ」
覗き込むアッシュモーヴの瞳にリディアはたじろいでしまう。
「だ、だって・・・。エドガーがあれを私に使うなんて言うから・・・」
「すまなかったよ、ほんの冗談のつもりだったんだ。わかるだろう僕はリディアに夢中でだから妖精たちからもこの結婚を祝福されている事がつい嬉しくって」
「嬉しくってって・・・。だって私は私が今でも全然エドガーに対して可愛い態度が取れないから・・・・、だから・・」
エドガーがとてもいたわるように優しく声をだすものだからリディアもぽつりぽつりと本音を口に乗せはじめる。
「だから、私以外の誰かにそれを使う気なんじゃなかって・・・・」
最後まで言葉を吐き出し、リディアはエドガーの様子を窺ったが彼は身じろぎもなにもする気配が無い。こんなこと考えるなんて、やっぱり愛想をつかされただろうか。
もしかして本当に、図星だったとか。リディアが最悪な想像をしかけてだけどそんなことエドガーの口からは聞きたくなくて立ち上がろうとする。
けれども腰を浮かしかけて体がぴたりと止まって初めてリディアはエドガーがまだ自分の手を握っていることに気付いた。
待ってといわんばかりに強く想いを感じられるぬくもり。
「僕がリディア以外の子にこれを使う気なんて無いに決まってるじゃないか。知ってるリディア?媚薬なんか使わなくてもそうやって僕を焦らす君はとっても魅力的で今だって僕は君をこのまま食べてしまいたい衝動と懸命に戦っているんだよ」
お互いに触れている手のひらからぬくもりが伝わってきて、それだけのことなのにリディアは全身が熱くなる。
「リディアはそのままで十分可愛いよ。その世界を映し出す瞳もキャラメル色の髪も、少し怒ったとき僕をしっかりと見つめる表情もなにもかも」
「・・・可愛くなんてないわ」
エドガーで耐性がついたとはいえ普段から褒められなれていないリディアはつい反射的に否定してしまう。そんなところが可愛くないなと思いながら。
「そうやって焦らす君に世の中の男はみんなはまってしまうよ。だからこそ僕はリディアを独り占めにしたくってしょうがないんだけどね。あぁ、だからね、君にこれを持っていて欲しくって呼んだんだよ。僕が持っていたんじゃリディアが不安に思ってしまうんだったらいっそのことリディアが持っていたほうがいいと思うんだ」
そういって媚薬の入った小瓶をリディアの手のひらのなかに置き、しっかりと握りしめさせる。中身もそのまま贈られたときと同じ量だけ。
だから本当にエドガーはこれを使ってはいないのだろう。
「エドガー・・・・」
これを使わなくても自分はエドガーの望むような花嫁になれるだろうか。
エドガーは今のままのリディアでいいと言ってくれている。その言葉を信じて、このままの自分でエドガーを想っていてもいいのだろうか。
妖精たちは純粋に自分たちを祝福してくれいる。だからこそのプレゼント。
だったら・・・・と、リディアは手の中にある媚薬をじっと見つめる。
これはやっぱり自分が飲んだほうが妖精たちも喜んでくれるのだろうか。
「妖精たちの祝福の気持ちを取っておこう。それにとってもきれいな細工だから飾っておくだけでもとても綺麗だよ」
リディアの迷いを打ち消すようにエドガーは優しく微笑む。
心の中で妖精たちにお礼をいおう。
だってエドガーはこのままの私でいいって言ってくれたもの。
「有難う、エドガー。色々考え込んじゃったけどなんだかスッキリしたわ」
「よかったよ。リディアが元気が無いのが一番僕には堪えるから。だけど・・・・」
エドガーもリディアのさっぱりした様子に何時もの微笑が戻ってきたのがやっぱりというか当然というか爆弾を落としてくれた。
「リディアが使いたくなったらいつでも使ってくれて構わないよ」
リディアは頬をひくつかせながらいつものように叫んでしまった。
あぁこれじゃあ当分可愛くなんてなれないわねと心の中でため息をつきながら。


「じゃぁあの薬はコブラナイの知り合いからだったの!?」
後日嬉々とした様子のコブラナイから詳細を聞き出したリディアは思わず叫んでしまった。
曰く婚約期間なんて今まで十分あったのだから何をいまさらと思い立ち彼の知り合い連中に片っ端から頼んで贈らせたらしい。
いまだに薬を使っていないリディアたちにコブラナイは盛大に嘆いていたがリディアとしてはまったく妖精たちもおせっかいなのよねぇと一人胸のうちに閉まっておくことにした。

長いのに読んで下さってありがとうございました

あとがき☆☆
もうちょっと短く終わるかなぁと楽観してたら全然収拾つかなくなったのでだったらもうちょっとひろげちゃえってことで結局原稿用紙換算20枚以上の短編を書いちゃいました。
20枚でも大仕事、小説化書きたいとか言ってるのどうする?な感じですがこれからももっと精進していければなと。
またこのくらいのボリュームで書きたいです。


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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

タグ : 伯爵と妖精 エドリディ 二次小説

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