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2008.03.14 21:40

テラスの一角、上等な椅子や真っ白なテーブルクロスに囲まれてリディアは戸惑っていた。
目の前には高級な茶器が並びこれからお茶の時間が始まることを連想させる。
それはいい。
なにしろここはテラスなのであってそういうふうにお茶を楽しむところでもあるのだから。
けれど、目の前で給紙をしているのは、この屋敷の主人でもあるエドガーだった。
「ちょっとエドガー、なんのつもり?」
午後も早々にテラスへと連れ出され座らされたリディアは少しばかり不機嫌そうに雇い主でもある伯爵へと問い掛ける。
なにしろ仕事の最中にいつものように待ったなしで連れ出されたのだ。
どうせまた碌でもないことと警戒心が募ってしまう。
「なにって、お茶の時間だよリディア。とても貴重なお茶が手に入ってね。ぜひともリディアと一緒に楽しみたくって少しだけ早いけれど呼んだんだ」
「だからってどうしてエドガーがお茶をいれているのよ?」
「愛する人に自分の淹れたお茶を飲んでほしい、僕の純粋な気持ちだよリディア」
ポットを片手に熱心に見つめられるとそれ以上はなにも言えずにリディアは押し黙ってしまう。
そうやって暖かい瞳で見つめられるとうっかり本気を見つけてしまいそうになる。
そうするとその本気を信じてしまいそうになるからだ。
リディアは何か言おうと口を開きかけるが結局は口をつぐんでしまう。
蒸らし終わったお茶がティーカップに注がれる。
美しい琥珀色の紅茶からは芳醇な香りがただよいリディアは口元を緩める。
伯爵邸でいつも出される高級なものと比べても、今目の前に出された紅茶は格段に値の張るものに違いない。それくらいの違いがリディアにも分かった。
そうして用意されたカップは一つきり。
他に用意された形跡はない。
「エドガーの分はないの?」
「あぁ。今日はリディアのためのお茶会だからね。僕はリディアをもてなす側なんだ」
「そ、そうなの?」
てっきり二人でを覚悟していた分リディアはすこし拍子抜けをした。
その中に少しだけ寂しさを感じ取って、内心慌ててしまう。
「エドガー様。用意が整いました」
「あぁレイヴンご苦労様」
そうして用意されたのはトレイに盛られたサンドウィッチやスコーンに鮮やかな色のフルーツ。
典型的なアフタヌーンティーのスタイルだった。
ただし少しだけいつもより不恰好。
こころなしかサンドウィッチの端が少しだけよれている。そして具が少しだけ飛び出しているものもある。それでもそのいかにもといった手作り感が微笑ましい。
「さぁ、リディアどうぞ」
「え、ええ。有難う」
いまいちお茶会の趣旨を理解しないままリディアは恐る恐るサンドウィッチに手を伸ばす。
なにしろエドガーに熱心に見つめられ、背後からは心なしかレイヴンの視線も感じるのだ。
注目されたままの食事に慣れていないリディアはどうしていいものか分からず自然動きが堅くなってしまう。
一口サンドウィッチをかじって飲み込む。
落ち着かない。
一人でお茶会、しかもエドガーが給士だなんて余計におかしいし不自然極まりない。
「ほら、リディアこっちのスコーンも美味しそうだよ」
にこやかに次を勧めてくるエドガーにリディアはついと視線を向ける。
「で、これは何の真似なの?二人してさっきから」
「何が」
睨みつけるリディアに対してエドガーは穏やかな笑みを崩さぬまま白を切ろうとする。
「何がって。エドガーが給士をするなんておかしいじゃない。レイヴンもずぅっと後ろにいて視線を感じるし。二人して何をたくらんでいるのよ」
「あぁ、レイヴンがリディアを見つめていたのはサンドウィッチが気になったからだよ」
「なぁに、レイヴン。お腹すいているの?だったら一緒に・・」
「違うよリディアそういうことじゃなくって」
「じゃぁどういうことよ」
先ほどからちっとも容量を得ないことばかりでリディアの声も知らずに力が入る。
「今日が何の日だかわからない?」
「今日?今日は3月14日よ。それがどうかしたの」
いつもと変わらない日。普通に仕事のある日。
リディアには特に何か特別なことが思いつかなかった。
「僕としては今まで君に余計なことを吹き込む男がいなくって嬉しいところだけどね。今日は3月14日。ホワイトデーだよ」
ホワイトデー、バレンタインのお返しの日と世間では騒がれている日だったような。
そういえばとリディアもその事実を思い出す。
何しろ故郷の街では変わり者扱いをされていたリディアだったし妖精たちはそもそもそんな人間たちの風習なんて無頓着だ。
「そうか今日はホワイトデーなのね」
「そう―だから今日はリディアをもてなそうと屋敷の皆で、といってもレイヴンやトムキンスだけど、たちと計画をしてね。みんな是非にと言うものだから」
そういってエドガーはリディアの髪の毛を一房すくい上げてキスを落とす。
「そのサンドウィッチもトムキンスとレイヴンが教わりながら作ったんだ。勿論スコーンもね。僕も混ぜたりしたんだよ」
だから食べてみてと言われリディアはスコーンにも手を伸ばす。
ほんのり焼きたてのスコーンは暖かく手で割ると湯気が立つ。
そのまま何もつけずに口に運ぶと温かみのあるやわらなかな甘みが口いっぱいに広がった。
「美味しいわ、ありがとう。エドガー、レイヴン。あぁエドガートムキンスさんは?彼にも直接お礼がいいたいわ」
まもなく加わったトムキンスも交えてリディアは改めて御礼を言う。
みんなの気持ちが嬉しかった。
リディアのために心を通わせてくれる、その気持ちだけで十分なのに。
みんなでお茶にしましょうとリディアが提案して全員でテーブルを囲んだ。
当然のようにエドガーはリディアの隣に座りそっと耳に顔を近づけてくる。
「テーブルに飾ってある花もねレイヴンが摘んできたんだよ」
以前よりも感情を表に出すようになったレイヴンにエドガーも喜んでいるのだ。
リディアもこうして暖かい時間を皆で一緒に過ごせる事が嬉しいと感じている。
こういうふうにずっと小さな幸せが続いていく、そんな未来を感じさせれる一瞬が今確かにここにある。
「勿論、僕からのお返しも期待していていいよ」
さらにエドガーはこんなことを続けてくる。
「えっ?もう貰ったじゃない」
驚いてリディアはつい聞き返してしまう。
「今夜僕を自由にしてくれてかまわないよ。リディアのために今夜の予定はあけてあるからね」
「あけてたって私は知らないわよっ!!」
平気でそんなことをいうものだからリディアの叫びがテラスにこだました。



あとがき
突発、そういえばホワイトデーでした記念企画です。
まえに書いたバレンタインと対。
ついでにいうならこの時代ホワイトデーなんてないじゃんっ!などという突っ込みはなしでお願いします。

一度途中アップだったのに拍手がついてました。
ありがとうございます。
そしてこれで正式アップ。
ラストとあとがき追加です。
リアルにお風呂入ってきました。ネットにかまけていると母に叱られます

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テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

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