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2008.07.21 17:35

「ねえカール。お願いがあるんだけれどいいかしら」
「なんですかファティ・リンシャ」
珍しく予定が空いたので連絡もなしにファティ・リンシャの邸宅を訪れたのはつい先ほど。
けれどもこの女主人はそんなガスカールの急な訪問に眉を潜めるでもなく快く出迎えてくれた。
ちょうどお茶の支度をしていたのよ、今日はスカルトードもいらしているの、とサロンへと案内をしたのだった。
「実はね・・・ナーシアなんだけれど」
ファティ・リンシャの口からナーシアという言葉が漏れると同時に今まで柔和だったガスカールの眉が一気に眉間に寄せられた。
あまりの早業にファティ・リンシャは感心してしまうほどだった。
「あの猿娘がどうかしたんですか」
声もいささか低くなっている。
「猿娘じゃありませんよ。そうではなくって、先ほどから姿が見かけないの。カールちょっとあなた呼んできてくれないかしら」
ガスカールを取り巻く空気が一段と冷え込んだのもさらりとかわしてファティ・リンシャは優雅な笑みを浮かべたまま頼みごとを口にした。
様子をみていたスカルトードは内心ヒューと口笛を吹いた。
さすがは渡り歩いた場数が違うといったところだ。
「どうせ書庫にでもうずくまって本をむさぼり読んでいるんでしょう。そんなやつほっときましょう」
対するガスカールも案外粘り強かった。
「あら、駄目よ。お茶はみんなで飲まなくては」
「しかし・・・・・。だったらスカルトードにも行かせればいいんです」
いきなり火の粉が飛んできたスカルトードはビクリと肩を震わせた。
「実は今日のお茶は私の実家から届いたものでしてね。少しばかり手順がややこしいので私が離れるわけにはいかないんですよ」
飛んできた火の粉もさらりと交わす極上の笑みを浮かべて説得力ある言葉をスカルトードは口にした。
実のところそんなこともなかったりするのだが、友人としてせっかくのファティ・リンシャの気遣いを無にすることはスカルトードは出来なかった。
結局ファティ・リンシャのお願いに陥落したガスカールは仕方無しに踵を返し扉のほうへ向かったのだった。


「これだけお膳立てしてあがているんですからもう少し仲良くなってもらわなきゃだめよねぇ」
ガスカールを見送ったファティ・リンシャはふんっと大きく息を鳴らした。
「そうですね~。二人ともそっち方面は鈍感ですからね」
スカルトードも同意する。
「ナーシアなんて本当きれいなんだからカールもぼんやりしていては何処から掻っ攫われるかわからないのにあんなにも悠長にけんかばかりして」
まったくもってその通りなのでスカルトードは苦笑しつつ頷くしかない。
周りがお膳立てをして果たして当の本人はいつになったら気持ちを自覚するのか。こればっかりはどうしようもない。
だからせめて少しでもきっかけがあればとこうしてファティ・リンシャも行動をするのだった。


さて、その追い出されたガスカールはというと。
まずは一応ナルレイシアの自室へと向かった。
トントンと扉を叩いても反応は無い。
これはしょうがない。あの本の虫は読書にふけっていると周りから隔絶されるのだから。
友人に一人同じような読書魔がいるのでそのあたりのところガスカールは心得ていた。
今度は先程よりも大きな音を立ててみるがやはり反応は・・・なし。
最終手段でガスカールは扉を開けた。
中は無人だった。
自室ではないとすると書庫だろう。というかそこしかないだろう。
やはり先に書庫からせめるべきだったと少しだけ公開してガスカールは書庫へ向かった。
内心に、どうして私がこんなことをするのかという怒りを溜め込みながら。

やってきた書庫の扉をくぐりぬけるとそこは一面の本棚。
そして古い本特有の紙とカビとインクが混じったような独特の匂いがした。
ガスカールが通路を順に見やっていると視界の端に見覚えのある金色の髪の毛が映った。
それははたして目当ての少女ナルレイシアだった。
年頃の少女とは思えない、踏み台のハシゴに腰をかけて一心不乱に本を読みふけっていた。
ガスカールは思い切り息を吐いた。
まったくあれのどこが貴婦人だ。猿娘で十分ではないか。
そうして大またでナルレイシアに近づいていった。
普通なら気配を感じて振り向いてもよさそうなのにこの少女は気付かないどころかガスカールが間近にいるのに相も変わらず読書に熱中している。
「おい」
ガスカールが呼びかけたが応答はなかった。
「おい!!!」
「うっ・・わぁぁぁ!!」
二度目は腹に力を入れて思い切り声を出した。
その成果もあってかナルレイシアも一拍おいて盛大に声あげた。
突然のことに本を落とすくらいに驚いたらしかった。
「やっとか」
「ちょっと、ガスカール!失礼じゃないのっ・・・ってあぁぁぁ本落としちゃったし。途中だったのにー」
ナルレイシアは踏み台の上から降りると慌てて落とした書物を拾った。
装丁の埃を払い大事そうに胸に抱える。
「失礼なのは貴様のほうだろう。ファティ・リンシャを待たせていることも失念しているのではないだろうな」
「なによっ!人の耳元で奇怪な声をあげるのは失礼じゃないって言うの?」
「奇怪とはなんだ。貴様が普通の声では気付かないからわざわざ大きな声をかけたまでのことだろう」
「失礼ね!!・・・・・ってファティ・リンシャっ??あっ、もしかして・・・時間」
ガスカールとの口げんかが白熱してしまいナルレイシアはようやくファティ・リンシャとのお茶の約束を思い出した。
そういえば今日はスカルトードが訪れるとかなんとかファティ・リンシャから聞いていたような気がした。
それをすっかり失念してちょっと時間が空いたし、とか思って書庫へと立ち寄ったのがまずかったらしい。
ナルレイシアが思っていたよりも時間は随分と経っていたようだった。
「ようやく思い出したか。ファティ・リンシャを待たせるとは随分な態度ではないか」
けれども呼びに来たのがよりにもよってこいつだとは。
ナルレイシアは内心ファティ・リンシャの遠まわしな嫌がらせかしら、とか思った。
彼女の気遣いもナルレイシアにとってはまったく意味のなさないことだった。
「うっ・・・・・・・。それについては弁解の余地も無いわ」
確かに時間を失念したのは己に非のあることだったのでナルレイシアは素直に謝った。
「ほう。猿娘にしてはえらく殊勝じゃないか」
けれども上から降ってくる悪意しか感じられない言葉の数々に黙っていられるほどナルレイシアはまだ大人になりきっていなかった。
キッと上を見上げた。



「あらあら、賑やかなこと」
扉の向こうから聞こえる口げんかと思しき声を聞きながらファティ・リンシャは苦笑した。
まったくせっかくのお膳立てもこうなってはまるで意味が無い。
「ええ、本当に」
「私は早く孫の顔がみたいのだけれどもねぇ」
「ええと・・・・それはまた性急な・・・・・」
今のままでは限りなく遠い未来なような、スカルトードはどう答えていいのかわからずに言葉を濁した。
お茶のしたくもちょうど整った。
今日は賑やかなお茶会になりそうだった。


あとがき★★
はじめての天を支える者の二次小説です
本編にでてくるガスカールの鈍さとナルレイシアへの悪態のつきかたがこれまためっちゃ私のツボでして
喧嘩ばかりな二人に、それをやさしく見守る図です。
つーかガスカールがお姫様抱っこしちゃえばよかったのにとか緑の糸をたどってよんで思ってました。ウォルセンに無自覚ヤキモチ特大盛で焼いちゃえとか

イラストは画用紙に描いてこないだ落としたフリーお絵かきソフトで塗ってみました。
色々格闘の末のものですので超乱雑・・・すみません
つーか今回でやっぱ私にPCお絵かきのセンスがないということを再認識・・・・・
根っからのアナログ人間なのでホント機能を使いこなせない・・・・・



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テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

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