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2009.02.02 21:23

「ああ。伯爵の気配がしなかったんでね。あがらせてもらった」
二人とも相性が良くないのか、会えば険悪な雰囲気になってしまうためリディアとしても片方だけでよかったと胸中で胸をなでおろした。
「なんか一人で変な動きをしていたけど何やってたんだ」
「う、うるさいわね。いろいろ考え事していたのよ」
先ほどから一連の動きを目撃されていたらしい。
リディアは恥ずかしくってつい語気を荒げた。


「ふーん。だったら気分転換に散歩でもいくか」
「散歩ね」
普段なら楽しいはずの提案にも今のリディアには素直に喜べなかった。
何やら憂いた返答にケルピーはリディアの顔を覗き込んできた。
「どうした、何か考え事か?」
「そうだわっケルピー。あなた男よね」
「あ、ああ」
リディアの唐突な確認にケルピーは面食らった。
「ね、あなたなら誕生日に何をもらったらうれしい?」
「誕生日に、貰う?」
ケルピーはリディアの質問に訝しげに返した。
「なんだそりゃ」
ああケルピーも妖精なんだった。
質問返しをされてリディアは肝心なところに気がついた。
人間の男の姿をしているけれど本性は水棲馬だ。つまり妖精。
「人間の風習よ。生まれた日にね、贈り物をするの」
「ふーん。そんなもんがあんのか」
ケルピーは感心したようにつぶやいた。
「で、ケルピーの意見も聞いてみようかなって思ったんだけど・・・」
そういえばあなたは妖精だったわ、とリディアが続けるより先に答えが返ってきた。
「そりゃやっぱ食いもんだろ。鳥とか」
答えを聞いてリディアは力が抜けた。
「食べ物って・・・ケルピー。あなたね」
「なんで?ダメか。もらって嬉しいもんだけどな」
「そりゃあそうかもしれないけれど」
けれどリディアがほしかった答えとは違ったのだ。
「なんだって急にそんなこと聞くんだよ」
「えっと・・まあいろいろあって」
リディアは返答に困って言葉を濁した。
「伯爵か?」
「えっ」
その言葉に思わず言葉を裏返してしまった。
取り繕おうとしてももう遅い。バレてしまったに違いない。
何か言わなきゃと思っているとぽんと頭の上に暖かなものがのせられた。
仰ぎ見るとリディアの頭上にはケルピーの掌がのっていた。
「あんなやつのためにそこまで思いつめんなよ」
「べ、別に思いつめてなんか」
「ま、なんだって喜ぶんじゃねえの。食いもんだったら」
そう言ってケルピーはくるりと背を向けて片手を上げた。
刹那、風が吹きそこにはリディアだけが残されていた。


「食べ物・・・か」
取り残されたリディアは先ほどケルピーが言った言葉を口に乗せた。
確かにケルピーだったら食べ物を貰えば嬉しいのだろう。
けれども伯爵はどうだろうか。
きっと彼ならたくさんの女性から贈り物をされているに違いない。
そう考え付いてリディアはぴたりと止まった。
そうだ。
おそらくリディアが考えなくっても、貴族の婦人などから高価な贈り物でもされているのではないだろうか。
だったらリディアが贈ったところで迷惑になるのではないか。
とたんにみじめな気持ちになってくる。
贈り物なんて、どうしてそんな気になったんだろう。
なんだか急に心に隙間ができたような気持ちになってリディアはくるりと屋敷のほうに体を向けた。
仕事をしよう。
言葉で伝えれば十分だから、きっと。
それに今日、屋敷にいたからてエドガーが帰ってくるかもわからない。
そう思うと自分はなにをやっているんだろうとリディアは余計に落ち込んでしまった。
庭園を屋敷の方向に向かって歩き出すと遠くから車輪の音が聞こえてきた。
ついでに蹄のテンポの良い音が次第に近づいてくる。
誰かが訪ねてきたのだろう。
あいにくと今この屋敷に主人はいないというのに。
立派な仕立て馬車の姿が見えてくる。
「リディア!」
屋敷の正面につけた馬車からエドガーが降り立ってくる。
「エドガー!どうして」
てっきり今日一日は帰ってこないと思ったのに。
驚き顔でその場で固まっているとエドガーは喜色を浮かべてリディアのほうに走り寄ってきた。
「きみこそ、ひとりきりで散歩?言ってくれたら喜んでエスコートするのに」
エドガーはリディアの両手を握りしめて、片方を自分の口元へと持っていく。
「ちょ、ちょっと気分転換していただけよ」
恥ずかしくって目をそらし気味にリディアは答えた。
婚約者として扱おうとするエドガーの態度にはいつまでたっても慣れない。
「じゃあ今からお茶にしよう。ちょうど珍しいお茶をいただいて、君を誘おうと思っていたんだ」
もう帰っちゃったんじゃないかと思って、そう言うエドガーは馬車を飛ばして帰ってきたらしい。
「今日は帰ってこないと思ったわ」
「どうして?リディアに会うためだったら僕はどこへだって行くのに」
またそんなことを言って。
気がつけば腰に手をまわされ完全にエドガーにエスコートされている格好になっている。
リディアがいくらうろたえたってエドガーはお構いなしで、洗練された動きでリディアを完璧にエスコートしてしまう。
玄関でトムキンスに迎えられたエドガーはハットと外套を預けてふと目線を一点に定めた。
そこにはアーミンの飾った大ぶりの花が活けてあった。
「今日はとても華やかだね」
「はい。先ほどアーミンさんが用意しておりました」
「アーミンが?」
エドガーはトムキンスの口からでた名前に少し面食らったような表情をした。
リディアはその様子を不思議な面持ちで眺めていた。


「リディア、今日はなにかあったかな」
「えっ?」
いつものサロンでエドガーはふいに話しかけてきた。
いや、話しかけるというより独り言に近い独白のような響きだった。
いつもとは違ったサロン、そこには美しく飾られた花束。
「エドガー、だって今日は・・・・」
まさかリディアから言わせるためのドッキリなのではないだろうか。
こいつならありえるかも。
「今日は?」
勘ぐっているとエドガーに先を促されてしまいリディアは観念した。
心持ちその顔が真剣だったから。
「だって、今日はあなたの誕生日なのでしょう?さっきアーミンが教えてくれたわ」
「アーミンが・・・・」
エドガーはリディアの言葉を繰り返した。
「まさかあなた自分の誕生日忘れていたの?」
リディアは訝しげに尋ねた。
なんだかこちらが騙しているような反応だ。
「えっ。・・・・ああ、そうだね。あまり頓着はしないかな」
エドガーは我に返ったのか居住まいをただしてリディアに返事を返した。
「どうして・・・」
エドガーなら絶対こうことを口説きのネタに使っていきそうなのに。
というか今日は絶対に女性に祝ってもらうために帰宅はしないと思っていたのに。
「昔はそれは盛大に祝ってもらっていたよ。母なんかとても張り切っていてね・・・・・」
その先が続けられる間もなくリディアは悟った。
誕生日なんて祝っている余裕がエドガーにはなかったのだ。
生と死のはざまを潜り抜ける生活を強いられいた今までの生活では、そんなこと。
「あっ・・・・。その・・・ごめんなさい」
なんといっていいのかわからずにリディアは黙り込んでしまう。
だって、下手な慰めの言葉なんて言えるはずがない。
「リディアが気にすることじゃないよ。組織にいたころはそんなこと思い出す余裕すらなく、むしろ誕生日なんて忌まわしいだけだった。一つ年をとるのに自分は無力で、なにもできないって。だから無意識に考えないようにしていたんだ」
きっとリディアには想像もつかない壮絶な生活。
そんな生活の中ではきっと誕生日を祝う余裕などなかったのだろう。
そういえばアーミンもそんなような言葉を言っていたのを思い出した。
「たぶんアーミンは昔僕がぽろっとこぼした言葉を覚えていたんだね」
あなたに気づかれなくっても想いを伝えたかったから。
祝ってあげたかったから。
アーミンの心が伝わってくる。
リディアは自分の手をきゅっと握り締めた。
今からだって、今からだって遅くはないはず。
だからそんな顔をしないで。
「おめでとう」
不意の言葉にエドガーが目を見開いた。
「今あなたは私の目の前にいて、ちゃんとみんなを導いているわ。だから、その・・・・私はあなたに出会えて、妖精博士として仕事がもらえたわけだし・・・」
ああ、もう。
何が言いたいのかリディアにもわからなくなってきた。
自分がとんでもないことを言い出さないうちにまとめなくては。
「これからっ、これからはみんなでお祝いしましょう」
一気にまくし立ててリディアはエドガーの様子を窺った。
少しばかり放心しているのか、その表情から感情を読み取ることは難しかった。
「二人きりで」
「・・・えっ?」
唐突な言葉は主語もなにもなくってリディアは戸惑った。
「二人きりで祝おう、とは言ってくれないの?」
「だっ、そ・・そそそれは」
どうしてそんな話になるのか、今はそんなことを言っているわけではないのに。
すぐにこれだから、エドガーは油断ならない。
「ありがとう」
「別に・・・。それより、私何も準備できなかったし」
「今すぐ僕のところにお嫁に来てくれるのがなによりの贈り物だけど」
そういってエドガーは両腕を広げて見せた。
「エドガー!!」
本当、こうところが信用ならないんだから。
「冗談だよ」
冗談に聞こえないからたちが悪いのだ。
リディアはまだ警戒を解こうとはしなかった。
エドガーは肩をすくめて、立ち上がった。
「さあ、アーミンたちを呼んでこよう。お礼を言わないとね」
リディアは差し出された手を掴んで立ちあがった。
「そうだわ。私スコーンを焼くわ。みんなでお茶にしましょう」



あとがき★★★
前書きで昨日書いちゃったしな
ひさしぶりの小説です

さて伯妖新刊、読み進めてます
感想もあげたい

こないだ久しぶりにアクリルガッシュを出してきて色塗っていたのでそのうちアップしたい



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タグ : 伯爵と妖精 二次小説

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| | | 2009.02.03 19:08 |

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