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2009.06.22 21:59

それはいつものように大学からの帰り道、通りを歩いていると聞き覚えのある声が耳に飛び込んできたときのことだった。
視線をそちらに向けると、もはや馴染みとなった金色の髪の毛をした少女の姿が、やはりというか、そこにあった。


いつも口を開けばお互いなぜだか憎まれ口をたたき合う仲だったのが、微妙な関係へと変化したのはここ一月ほどのこと。
突然、件の少女が自分への恋心を宣言したからだった。
当然のことながら衛は困惑した。
自分は何か決定的なことを彼女にしただろうか。考えてみてもおおよそ心当たりは浮かんでこず、結局これは今でも謎のままだ。
衛が足を止めたことにも気付かず、うさぎは楽しげな笑い声をあげていた。
何か荷物を持って、クラスメイトだろう男子と連れだって歩いていた。
最近は衛にも向けるようになった明るい、ぱっと華やぐ笑顔だった。
つい目で追ってしまい、衛はあわてて視線をそらせた。
何をやっているんだろうか。
ただ知り合いを見かけただけのことだ。だったらいつものように声をかければいいのに、今日はそういう気分にはなれなかった。
衛に自分の世界があるように、うさぎにだって、彼女の属する世界がある、ただそれだけのことなのに、どうしてこうも動揺するのか。それがわからなかった。
衛と一緒にいるより、はた目から見たら微笑ましい中学生カップルだろう、その姿を垣間見たことへの妙な苛立ち。
これ以上自分にまとわりつかれなくていいことではないか。
なのにどうしてこうも心穏やかでないのだろうか。
「あ、おいっ、大丈夫か?」
その声に振り返ってみれば、うさぎが荷物を持ったまま盛大につまずいていた。
さすがに中学生ではとっさに支えるなどという高等な技を持ち合わせていなかったのか、隣にいる男子が散らばった荷物を拾い集めていた。
振り返った衛は足を出しかけて、その場に固まった。
このまま彼女のもとへ?
まさか。隣にはエスコート役がいるのに、どうして自分が。それよりも、ここまでうさぎのことを気にかけてしまう自分に戸惑った。
衛がその場から動けないでいる間にうさぎと、隣の彼はなんとか荷物を拾い上げて再び歩き始めた。
おそらく、男子生徒におっちょこちょいぶりをからかわれているのだろう、ばつの悪そうな顔をして笑っているうさぎが視線の端にうつった。
男子生徒はおそらく照れからだろう、うさぎから荷物をひったくるようにして奪い取って、そのまま二人で歩き去って行った。
何もできないままその光景を眺めるだけとなった衛はしばらくその場にたたずんでいたが、ふと我にかえって踵を返した。
自分なら、きっとうさぎのドジっぷりをからかって、最後にはたぶん手を貸した。彼のしたように、やっぱり荷物も持っただろう。
まったく、何を考えているんだろう。
一方的に目撃してしまった罪悪感だろうか、すっきりしないまま衛は帰路に就いた。


「あーっ!衛さんだ」
そんな声を拾ったのは十番通りを歩いているときだった。
よっぽど何か縁でもあるのだろうか。衛とうさぎは本当によく道端でばったり出くわすことが多々あった。
言い訳を先にしておくと、衛に他意はない。勝手に向こうが視界に入ってくるのだ。
衛よりも十メートルほど離れた先に立っていたうさぎは嬉しそうな顔をして、こちらへ駆け寄ってきた。
また転ぶんじゃないかと頭をよぎったのは、この間のことがあったから。
といっても一方的に衛が一部始終を見ていただけで、うさぎは気がついていなかったけれども。つい数日前のことが頭によぎって衛は苦い顔した。
結局ただ見ていることしかできなかった。
けれど、焦燥感に駆られる自分もいて、あの晩妙に衛の心をざわつかせた。
「おい、そんなに慌てると…」
一応注意だけでもしておこうかと声をかけたが遅かった。
「え…あっ」
衛の声が呼び水となったのかうさぎが躓きかけた。
あっ、とよろけて、どうにか踏ん張ろうとするも一、二歩足をもつれさせた。
「何やってんだ」
今度は衛も一にも二にもなく前へ飛び出した。
間一髪のところで衛の腕がうさぎの体を支えた。前のめりになったうさぎはしばし呆然としていたが、自分を支えているのが衛だと気づいたのかさっと体を起した。
「うわっ」
うさぎは頬を染めて、口をぱくつかせている。
どうやら突然の出来事に頭がついていっていないらしい。
衛のほうも彼女のそういう反応にまだ慣れなくて、どうしたものかと頭を抱えてしまう。
「あ、ありがとう。助けてくれて」
「別に。だから言おうとしたんだ。そんなに慌てると転ぶぞって。誰かさんは俺が言い切る前に転びかけたけど」
うさぎの視線から逃げるように衛は言った。
自分はいつもと変わらない、そう言い聞かせるように。
「べ、べつにいつも転んでるわけじゃないもんっ!衛さんの意地悪」
真正面から注意されてばつが悪いのかうさぎの反論も少し元気がなかった。
「ほう、その割には…」
ついいつもの調子で口を開きかけて衛は慌てて、その口を閉じた。
何を言おうとしているんだ。
あれを今持ち出すのは違うだろう。
「えーっ、何。気になる」
「なんでもない。要するにもっと足元を注意しとけってことだ」
衛は咳払いをひとつして取り繕った。
「だったら、また次も今みたいに衛さんが助けて?」
うさぎは無邪気にそう言って衛の腕に自分のそれを絡めてきた。
これも、いまだに慣れないうちの一つだ。どうしてそうも簡単に触れてくるのだろうか。少なくともこっちはそんな意思表示なんてしていなかった。けれども彼女はまるで肉親に触れるかのように、何の警戒もなしにこちら側に入り込もうとしてくる。
これまでとはまるでちがううさぎの豹変ぶりに衛はついていけなかった。
けれど、いつの間にかそれに慣れてきている自分がいるのも確かなことで、その心境の変化にも戸惑っていた。
「あのなあ」
衛はうさぎの腕から逃れた。
逃げられた格好のうさぎはぷうっと頬を膨らませた。
「助けてくれるヤツくらい、他にもいるだろう」
無邪気に近づくうさぎをどうにかしたくて、いや、おそらく自分でもよくわからい苛立ちに苛まれて衛はつい口に出してしまった。
「そんな人、いないもん」
「だったら学校で探せばいいだろう、中学生同士…」
そこまで言って衛は口を閉じた。なにを言っているんだ、さっきから。
これではまるで…。
うさぎは衛の言葉を受けて、その顔を曇らせていった。
「悪い、今のは忘れてくれ」
慌てて衛は口を開いた。
どうしてこの間のことを引き合いに出すような真似をしたんだろうか。こえではまるで衛のほうが、嫉妬しているようではないか。
「本当、悪かった。謝る。ちょっといろいろ考えることがあって」
さすがに本当のことなんて言えなくて衛は言葉を濁した。
「じゃあ、また助けてくれる?」
うさぎがゆっくりと確認するように言葉を発した。
「あのなあ」
「だって、衛さんのほうから言ったんじゃない。悪かったって」
どうしたものか、たぶんこういうことに関しては女の子のほうが何枚も上手なんだろう。先ほどまでの曇り顔がすでに一転している。けれど、曇り顔のうさぎよりもころころとよく変わる表情をしているときのほうが何倍も生き生きしているのは事実で、衛はそういううさぎの顔は嫌いじゃなかった。
「あー、わかったよ。運が良かったらな」
「なにそれー」
どうしてこんなことを言っているのか衛自身よくわからない。
「俺だって万能じゃないんだから、おだんご頭の危機にいつも駆け付けられるわけじゃないだろう」
衛のその言葉にうさぎは何か言いたそうな顔を向けてきたが、結局その口から言葉を発せられることはなかった。
ただ吸い込んだ空気を吐き出して、諦めを含んだ笑顔を衛にむけた。
「わかった。それで我慢する」
うなずいた笑顔はどこかさみしげで、それがどうしようもなく衛の心をざわつかせた。


★☆☆☆★☆☆☆★★☆☆★あとがき★☆☆☆★☆☆☆★★☆☆★
ひさしぶりにまもうさです
アニメ設定ですね
ちょうどR初期で衛さん視点で書いてみました
当初は衛さんのやきもちの話でも…とかおもって書いていたのですが、ふたを開けてみたら自分でも落ちのつけどころがわからない、なんとも微妙な話に
何なんだろう、的な感じですが、楽しんでくだされば幸いです
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タグ : セーラームーン 二次小説 まもうさ

| セーラームーン | コメント(1) | トラックバック(0) | |

この記事へのコメント

最高!!これ、すごく好きです。まもちゃん視点な所がまたいいですね。
(*^-^*)そして今回。もっとも共感したフレーズが


衛に自分の世界があるように、うさぎにだって、彼女の属する世界がある、ただそれだけのこと


これは、…本当に共感しましたね。歳うんぬんより、学生の場合。特に三年や四年…学年が違うと当たり前ですけど入れ代わりになって学校で一緒にって難しくなりますもんね…。

そんななか!約束もしていないのに、出会い続けるうさぎちゃんとまもちゃんの引力…恐るべし。今回のこのお話しの最大の魅力は、やっぱりまもちゃんのヤキモチです!私、未来様が書いて下るまもちゃんの嫉妬作品…本当に大好きなんです。
特にこれは、お気に入りになったので画メモしちゃいます(笑)

| ちこ | URL | 2009.06.24 00:04 |

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