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2014.07.22 14:38

イースターも過ぎれば昼の時間が長くなって、ようやく長い冬が終わりを告げたことを実感する。
もうちょっと先になると夜は9時をすぎてもまだ昼間のように明るくなる。
パメラはランプ代の節約になってこの季節は助かるわ、っていかにも彼女らしい理由を楽しそうに言っていた。
もちろんクリスティンもこの季節は好きだ。
長い冬が過ぎ去って新しい緑の芽吹く季節。
春の訪れとともに一気に町は華やいだ季節になる。
新しいドレスの注文も舞い込むし、クリスティン自身新しいドレスのデザインや色の組み合わせを思い浮かぶのもこの季節が多い。
現実的なところでいいことはやはり明るい時間が長いのでドレス作りの作業効率があがることだろうか。
もっとも時間間隔もなくなることのほうが多いので明るいままで油断していると気づいたら夜の8時を回っていた、なんてこともおおいのだけれど。
クリスティンは針を置いてうーんと伸びをした。
さすがにずっと同じ格好で針を動かしていると体が固まってしまう。
こまめに体を動かして水分もちゃんととらないとだめよ、そんな親友兼売り子の声が耳元に聞こえてきそうだ。
作業部屋にはクリスティン一人きりなのでこれは頭の中でパメラのセリフがよぎっただけなのだが、日ごろから同じようなことを何度も聞いているのでまるでなにかの機械がくるくると回っているかのように容易に頭の中で自動再生される。
(そういえば今は何時なのかしら)
気になって造りかけのドレスを机の上に整えて時計に目をやった。
「あら、もうこんな時間」
時計の針は夜の8時を少しだけ超えていた。
いつもだったらもう少し前に夕食にしましょうと声をかけてくれるパメラは今日はいない。
めずらしく天気もよかったので町の友人からパーティに誘われたのだ。
パーティといっても近くのパブで近所の知り合い通しが集まって飲んだり食べたりするだけなのだが、店の顔なじみも参加するのでクリスティンがパメラを送り出したのだ。
パメラはクリスティンのことを心配していたけれど、せっかくの天気なのだし誘ってくれているのだからとパメラを送り出した。
送り出される側のパメラはクリスティンが仕事に没頭すると時間を忘れることがしょっちゅうだということを十分に分かっているので何度も何度も夕飯をきちんと取ることと適度な水分補給に休憩の念押しすることを忘れなかったのだが。
たしか昨日パメラがつくってくれた煮込みが残っていたはずだ。
出かける前にパメラがキッチンにパンと昨日の残りがあると言っていた。
あとはお客様にお出しするように焼いたパメラの焼き菓子のすこし焦げてしまったものや形の悪いものがあったはず。
今日はたくさん作業したから甘いものも少しくらいたべてもいいかしら、と思案しながら作業部屋の扉に手をかけた。


窓の外は明るいのに静寂に包まれている。
昼間の明るさなのに外を行きかう人はほどんどいない。
世界から取り残されたかのようにシンとした町。静かすぎる景色にクリスティンは少しだけ身震いをする。
まだ明るいから世界はせわしなく動いているはずという認識とは別の光景。
毎年のことだけれどこの季節はクリスティンを妙な気持に駆りたてる。
さみしいような切ないような、誰かに隣にいてもらいたいような。
鍋をコンロに持っていって火をつける。
残りものだけれどパメラの料理は絶品だし、時間を置くと味がしみ込んでいておいしい。
食後に紅茶でもいれようか。
温めている料理を何とはなしに眺めていると外からエンジン音が聞こえていた。
まさか-
クリスティンはどきりとした。
誰かそばに…。静かすぎる町に部屋。
そこで求めてしまう、無意識に思い浮かべてしまった相手。
(まさかね。もしかしたら誰か他のお金持ちがたまたま通りかかっただけかもしれないし)
クリスティンが頭の中に思い浮かべた相手を無理やり外に追い出そうとしている間にもエンジン音は近くで止まって誰かが店舗の扉をノックする音が響いた。
クリスティンはびくりと反応して音のするほうへ振り返った。
こんな時間に尋ねてくるような知人はほぼいないだろう。
もしかしたら急ぎの依頼人かもしれない。ロンドンにだって車を所有している貴族やアッパーミドルクラスの人だって他にいるだろう。
クリスティンは火を止めて玄関の扉を開けに向かった。
扉の向こうから見せたのは依頼人でもなく、クリスティンのよく知っている顔、つまりはシャーロック・ハクニール侯爵だった。
「やあ、近くまで寄ったものだから」
シャーロックは臆面もなくそう言って笑顔をみせた。
隙のない氷の笑顔。
違う、少しだけ頬を紅潮させてまだ少年の面影が残る笑顔。
「あ、あの…」
いきなりの訪問でクリスティンのほうは気の利いた言葉がなかなか出てこない。
こういうとき他の女の子たちはどうやって言葉を返すのだろう。
「でも驚いた。てっきりパメラが出てくるとばかりおもっていたから」
「えっと、その…。パメラは今日はいないんです」
やっとそれだけ返すことができた。
「いないって?」
「その、ジェイムスたちに誘われて…近くのパブレストランで近所の人たちとちょっとしたパーティに…」
ようやくそれだけ絞り出してうつむいてしまう。
なんていうかその言葉を出したら気づいてしまったのだ。
もしかして今二人きり、という事実に。
「クリスはパーティーにはいかなかったの?」
「えっと、はい。…ドレスの注文が入っていて」
「急ぎのやつ?」
「いえ、けれどデザインとか色々思いついたら止まらなくって。私はにぎやかなの苦手なので…」
「…なるほどね」
一通り状況確認が済んでシャーロックが黙ってしまうとクリスティンは落ちつか投げにエプロンの端を手に持ってもてあそんだ。
どうしよう、この流れでこのあとはどうすればいいんだっけ。
パメラだったらこういうときどうするんだろう。
だいたいいつもパメラがクリスティンの仕事部屋にシャーロックが訪れたことを知らせに来てくれるから、いざ自分が対応すると勝手がわからずに固まってしまう。
「あのっ…その…」
「パメラがいないんじゃ、勝手に入らせてもらうのはだめかな」
「えっと…」
まだ明るいからと思ってみるもよく考えたらすでに夜8時を回った時間だ。
確かにこんな時間に女性の家、この場合は店舗だが、を訪れるなんていささか常識に外れる。
親しい間柄ならともかく、今のクリスティンとシャーロックの関係はただの友達、それもかつての依頼人がときどき店を訪れる程度のものだ。
「こんな時間にすまなかったけど、最近クリスたちの顔をみてなかったし。元気にしてるかなって思って」
「は、はい。私たちは元気です。定期的に注文をくださるお客さまもいますし」
たぶんこの答えはシャーロックが求めていた回答とは少し違ったのだろう。
彼は少しだけ息を吐いて口の端を持ち上げた。
「まあ顔もみれたことだし今日のところは失礼するよ。あと、俺が帰った後はしっかり戸締りをして他の誰が訪ねてきてもだれも中にいれないこと」
「え…けれどもしかしたら依頼人かもしれないので…」
きょとんとしてクリスティンが小首をかしげるとシャーロックは難しい顔をしてクリスティンのほうに顔を寄せてきた。
「だめったらだめだ。そもそもこんな時間に依頼に来るような非常識な人間は絶対ろくでもない依頼人だ」
いまいちシャーロックの理屈がわからないままクリスティンは押し切られる形で約束させられた。
そもそもシャーロックだってこの時間に前振りもなく訪ねてきたのだから他の人だって別に悪気はないのではないだろうか。
たまにシャーロックはクリスティンには理解できないことを押しつけてくる。
「また近いうちにくるよ」
「ええ、お待ちしています」
シャーロックが手を振りかざしたのを少しだけ真似してクリスティンも小さく手を振ったみた。
それに気付いたシャーロックが嬉しそうに笑ったのを見てクリスティンも控えめにほほ笑んだ。
名残惜しくて彼が車のほうに向かうのを眺めているとシャーロックが身振りで家に入れと言っているのが理解できた。
シャーロックは案外心配性だ。
親しくなればなるほど彼のことを少しずつ知っていく。
冷たいけれど優しい人。
彼があまりにも家に入って鍵をかけろというしぐさを繰り返すのでクリスティンはおとなしく従った。
もう少しだけシャーロックのことを見送りたかったのに。
そう考えている自分に気づいて再度赤くなった。
今度は誰も見ていない。気づくのはクリスティンただ一人だけ。
次の機会はいつだろうか。
もうすぐ社交の季節だからシャーロックは忙しくなるだろう。
次会えた時はもうすこしだけ気のきいた言葉をかけることができたらいいな、と思いながらクリスティンは店舗を後にした。



☆★★☆☆★★☆あとがき☆★★☆☆★★☆
初ヴィクトリアンローズテーラー二次小説です
なぜまもうさ熱が再燃している中であえてのヴィクロテか
なぜでしょう
なんとなくイギリスのこの季節のネタが書きたくて
だって夜10時まで明るいんだもん
明るいのに外は誰もあるいてなかったり、ちゃんと夜な生活してたりして私的にはそれがかなり変な感じだったり
そんな思いを乗せてつくってみました
クリスは地の文でもクリスだったと後で気づいたけどめんどくさいのでそのままで
時間軸としてはクリスとシャーリーが知りあってまだそんなに経っていない頃をイメージして
クリスがめちゃくちゃスローペースな子だから色々四苦八苦
動かしにくいです
だったら恋人になってからのほうがよかったんだけど、そしたら今度はシャーリーがうざいので
今度はやっぱり恋人になってからのほうがいいかな
たぶん書きやすいはず

最近書きたいネタがたくさんあるので頑張って更新します
つか夏は暑いので部屋でネットしてる時間が増えるからたぶん更新も多少は頻繁になる…ハズ
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