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2015.01.03 18:32

クリスマス時期のロンドンは相変わらずの曇り空だけれど、もうすぐ訪れるクリスマスを前にして街はいつもよりも活気づいていた。
マーケットではクリスマス用の飾りの屋台やきらきらと光るキャンドルに贈り物にぴったりな小物などであふれかえっているし寒い季節体を温めるのにちょうどよいブランデー入りのホットチョコレートドリンクなども売っている。
甘い香りにつられて屋台の前には人だかりができている。
もちろん子供用にお酒の入っていない飲み物の屋台もきちんとあってそちらではお小遣いを握りしめた子供たちや子どもにせがまれた大人が財布のひもを緩めている姿が見受けられる。
日の短いこの季節、街はいつにもましてくらやみに染まってしまうけれど、その分街に灯る光がクリスマスの雰囲気を十分に盛り上げてくれる。
甘いチョコレートを口に含んでリディアはふっと息を吐いた。
少し歩きまわったから甘さが疲れた体に心地いい。
「ちっ、なんだよ。全然ブランデーの味なんてしないじゃないか」
こうやって悪態をつくのは親友のロタだ。
ほんのり香る程度のブランデーは彼女の中では全く意味をなさないらしい。
もう少し濃いほうがいいとつぶやいている。
リディアとしてはこれ以上濃いと酔っぱらってしまうので香るくらいでちょうどいいのだが。
「これも十分おいしいわよ。甘いものっていいわね」
そうやってにっこり微笑めばロタもにっと笑みを返してくれる。
「まあな。ちょっと物足りないけど、あとでポールでも誘ってパブにでもいくさ」
「そのポールさんへの贈り物のめどはついたの?」
「…まだ」
リディアが尋ねるとロタは不本意という顔で目を伏せた。
クリスマス前のこの時期にエドガーの目を盗んでリディアを伯爵家から連れ出したロタの願いは一緒にポールへのクリスマスプレゼントを探してほしいとのこと。
最初はオックスフォードストリート沿いのお店を物色していたのだがピンと来るものが見つからなくて歩いているうちにコヴェントガーデンのあたりまで辿り着いてしまったのだ。
店を冷やかしながら結構な距離を歩いたので目についた露店でホットチョコレートを買って一息ついていたところだった。


「何かこれ!っていうものがあればいいんだけど…」
ずいぶんな時間を割いた割に成果が上がらなくてロタにもいつもの勢いがなくなっている。
「そうねえ。男性へのプレゼントって何がいいのかしら」
もうすぐ迎えるクリスマスはリディアにとっても結婚後初めてのものになる。
その前の年は実家に帰っていてそもそも一緒には過ごしていない。
今年こそは!と思っているのだけれど、そもそも男性に縁のなかった人生を歩んできたリディアだ。
異性への贈り物なんて敷居が高すぎる。
世間一般の男性に喜ばれるものなんて皆目見当がつかない。
ちなみにこの間それとなく(リディアとしてはそれとなくだがほぼ直球の質問だった)エドガーに探りをいれてみたのだけれど、「リディアがリボンに巻きつけられてベットの上に座っていてくれるだけで僕は幸せだよ」とか見当違いの回答が返ってきたのでリディアとしてもどうしていいのかお手上げ状態だった。
「どうせエドガーのことだからスケベ根性丸出しのおかしなことを言ってきたんだろう」
「う…、そ、それは…」
「あいつの言うことなんてまともに取り合うことないさ。リディアも苦労するな」
確かに…と控えめに二人についてきたケリーはついロタの言葉にうなずいてしまった。
「それよりロタ、ポールさんへの贈り物よ」
「うーん、そうだなあ」
ロタは空を仰いだ。
実はこちらもさりげなくにおわせてみたのだがやっぱり見当違いの返事、というかロタがプレゼントを用意したいということが伝わっていないような回答が返ってきた。
そもそもロタだって今までこういう行事に無縁な生活を送ってきたわけであって、何がいいのか皆目見当もつかない。
海賊時代の仲間だったらナイフとか酒とかでいいから簡単なのに。
ポールにナイフは似合わない、そうロタは思う。
誰かを傷つけたら後で後悔すると思うから。だから最初からそんなものはもっていなくてもいい。
絵の道具はどうだろう。
さきほどから散々みたけれどロタには何がいいのかさっぱりわからなかったし、何が必要なのかもわからない。
筆とかやっぱり新しいもの欲しいのかな。
「やっぱり絵の道具とかのいいのかな」
「そうねえ。筆とかスケッチブックとか」
「ああ、あいついつもスケッチブック持ち歩いてるもんな」
やっぱりそういうものの方が喜ばれるだろう。
絵の道具のほうが無難か。
「けど、ピンと来るものがないんでしょう」
「えっ、どうして」
「だってさっきからロタとても思いつめた顔をしているもの。もっと違うもの、何か特別なものを渡したい。違う?」
リディアの言葉にロタは言葉を失った。
「うん…。さっきから色々と考えて過ぎている」
たぶんリディアの言うとおりなんだろうと思う。
ポールのことを思い浮かべて思いつくのは絵の道具だ。だって画家なのだ。
やっぱり最初にイメージするのはそういう普段仕事で使うものであって。
実際に画材店もいくつかはしごをした。
そうして実際にみた筆や筆入れにすり鉢などにぴんとくるものはなかったのだ。
いつも世話になっているし、なにか送ろうかな。最初はそのくらいの気持ちだったはずなのにいつの間にかこんなにも真剣になって考えてる自分がいた。
そしてここまで真剣に選んでいる自分にもぴんとこなくて、いつものロタではない気がして怖気づいている。
だれか大切な人のため。おじい様以外の異性に贈り物。なんだかまったく違う自分以外の誰かのようだ。
「私もそうよ。エドガーに何か贈り物をしたいけれど、すっごく色々と考えすぎちゃって。結局どうしようってそこに辿りついちゃうの。私なんてセンスだってそんなに良くないし、エドガーはすでに高価なものたくさん持っているし」
「そうなんだよなぁ、ポールだって愛用の筆をいくつか持っているし、おやじさんの形見だっていう道具もいくつかあるし」
「だからああやってプレゼントは私でいいなんて言ったりしたのかしら。私の選ぶものなんてたかがしれているものね」
「私に比べたらリディアのほうが何倍もいいもの選ぶにきまっているよ。問題は私のほうなんだよ…。他の連中は酒とタバコとか適当なことしか言わないし」
お互い自分の悩みに陥っているので若干ずれた回答になってきている。
そして同時にうーんと呻ってみせた。
「僕はリディアの選んでくれるものなら何でもうれしいよ」
二人の悩み合戦に突然別の声が割って入った。
「エ、エドガー!」
「げっ!」
エドガーが不在の間にちゃっかりとリディアを連れ出したロタはあからさまに嫌な顔をした。
「どうしてここに?」
執事にオックスフォード辺りで買い物をするだけだと言い残してきただけなのに、どうして居場所が分かったのか。
「もちろん僕のリディアに対する愛の力のおかげだよ」
「なーにが愛の力だ。どうせ汚い手でも使ったんだろう」
せっかくのリディアとの外歩きを邪魔されてロタが機嫌悪くエドガーに突っかかった。
「君こそ、人の最愛の奥方を無断で連れ出すのはやめてもらおうか。まったく油断も隙もないったらないよ」
「そっちが昼間っから遊び呆けているからだろ。リディアだって一人でさみしそうにしていたから気分転換に私が誘ったんだ追うが。文句を言われる筋合いはないね」
「違うよリディア。遊びじゃないんだ。とある紳士のところへ挨拶に行っていただけで」
エドガーはロタの言葉を受けてリディアに説明をする。
二人の口論に巻き込まれてリディアはどうやって終息させようかと思案げな顔になる。
「私のことは大丈夫よ、エドガー。ちょっとロタと買い物をしていただけだし」
そう言ってエドガーの手をやんわりと押しとどめた。親友の前堂々と腰に手をまわされるのはやっぱりまだ恥ずかしいと思うリディアだった。
「ロタ、あなたが選ぶものだったらポールさんはなんでも嬉しいんじゃないかしら」
「そ、そうかな…」
リディアの言葉に自信なさげにロタは少しだけ視線を下げた。
「さっきのエドガーの言葉じゃないけれど、ポールさんだってロタが一生懸命考えて選んだものなら喜んで受け取ってくれるわ」
リディアの言葉がゆっくりとロタの中に入ってきた。
じんわりと少しずつ体の中に広がっていく。
「わからないんだ。最初は気軽な気持ちだったのにさ。いつの間にか結構真剣になってて。そうするともう何が何だかわからなくなって」
少しだけ自嘲気味にロタは笑った。
「そんなことないわ。誰だってそうよ。わたしだって、その…」
コホンとリディアは咳ばらいをした。
隣に当の本人がいると色々と言いにくい。やっぱり女の子に打ち明けるべき話は男性のいないところでするべきだ。
「ええと、つまりね。ロタが大事な友達であるポールさんへのプレゼントを真剣に考えるのは当たり前のことであって、そんなロタが選んだものならポールさんだって喜んで受け取ってくれるってことよ」
「うん。そうだな、深く考えすぎていたのかもしれないな」
大切な友達。リディアの言葉のおかげで何か方向性が見えてきた用な気がする。
でもせっかくだから普段から使ってくれるもののほうがいいかもしれない。
そうか、だったらロタでも探せるかもしれない。
男性へのプレゼントっていうところにこだわり過ぎていたのかも、ロタはクスリと笑った。
自分もまだまだだ。
「どうしたのロタったら」
「ううん。なんかすっきりしたよ。うん、大丈夫あとは私だけで何とかなりそう」
「本当?エドガーに遠慮しないでいいのよ。私ももうちょっと手伝うし」
「いや、ロタがああ言っているんだから帰ろうリディア」
リディアの申し出に間髪いれずにエドガーが言葉を重ねてきた。
これ以上リディアを貸すつもりはないとばかりにロタに圧力たっぷりに視線を投げかけてくる。
なまじに笑っているから始末に悪いし、別にそんな顔ロタには効かない。
「もう、エドガーったら」
「大丈夫だよ。そろそろ暗くなってくるし。私も明日にでも改めるよ」
「そう?ならせめて途中まで一緒に」
「リディアひきとめるのも野暮だよ」
「んもうっ!エドガーは少し黙ってて」
こんなめんどくさい夫ロタはご免だ。リディアにはいつも感服する。
「リディアもあんまりこいつのわがままを許さないほうがいいぞ」
そう言って別れようとするとリディアがあわてたようにポシェットの中から何かを取り出した。
差し出されたそれは真っ白な封筒だった。
「忘れるところだったわ。今日渡そうと思って持ってきたの。クリスマスの招待状よ。クレモーナ大公と是非一緒にいらして。マナーン島だからちょっと遠いけれど」
数あるエドガーの領地であるその島については直接行ったことはないけれど、リディアから話だけは聞いていたので知っていた。
「いいのか?」
よくあのエドガーが許したな、とちらりと視線をやってみたら案の定苦虫を噛んだような顔と出くわした。
なるほど、不本意という言葉がありありと浮かんでいた。
「もちろん。ポールさんも招待しているの。父さまも来るし、みんなで楽しく過ごしましょう」
にっこりリディアの微笑みにつられてロタも破顔した。
だったらそれまでにプレゼント用意しとかないとな。
それにみんなで過ごすクリスマスは絶対楽しいに決まっている。
「ああ楽しみにしているよ」



あとがき☆★☆
ひさしぶりに伯爵と妖精で二次小説を書いてみました。
雰囲気をつかむのが大変だったのとかなりまとまりのない話になってしまいましたが、時系列的にはエドリディ御一行でマナーン島クリスマスの番外編の前あたり
ロンドンのクリスマスが懐かしすぎて、よし書こうと思っていて年が明けたパターンです
ごめんなさい
ヴィクトリアな時代にクリスマスマーケットがやっていたのかは不明です
ドイツでは伝統だったけれどイギリスに伝わったのはいつのころでしょう
すみません勉強不足です
現代のロンドンではいろんなところでクリスマスマーケットが開かれています
サウスバンクのあたりがポピュラーでハイドパークではウィンターワンダーランドが
コヴェントガーデンは私の創作です
クリスマスっぽいものも売ってますが普通にいつもの通常運転でデコレーションがきれいです

ニコにレイヴン、ケリーも会話させたかったけれどそうしたらもっとややこしくなって時間もかかりそうだったのでメインはロタとリディアだけにしました。
けどやっぱりエドガーも入ってくるのよね
エドガーなら絶対に「リディアにリボンを巻きつけて」あたりのこと言いそう
私を食べてって言ってくれたら最高なんだけどとかセクハラオヤジ発言をぶちかましそうです
そしてそんなエドリディネタも書きたい


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