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2015.02.14 21:45

寒い寒い冬の曇り空を見上げて息をつく。
まだ春の訪れとは程遠いスコットランドの田舎町。
冬特有の重い灰色の雲はとても分厚くて、そこに太陽が隠れていることだって忘れそうだった。
寒い思いをしてにぎやかな目抜き通りまでやってきたのはちょっと入り用だった小間物を求めてだったけれど、リディアは今日という日がなんという日だったかを思い出してすぐに後悔した。
こういうイベント事は苦手。
気にしないって思いつつやっぱり少しは意識してしまうから。
2月14日は日々の感謝や愛情を伝える日として男性から女性に贈り物をするのが主流だ。
甘いお菓子だったり花だったり。
菓子屋に平時に比べて男性客がおおいなぁと何とはなしに見やって思い出したのだった。
リディアの周りには人間よりも妖精のほうが多かったからこういうイベントごとは昔から縁がなかった。
クリスマスは家族で過ごすから別だけれど、父からバレンタインに花をもらうのもおかしな話だし、そもそも父だってこういう行事にはめっぽう疎くて、今日が何の日か絶対に覚えていないはず。
リディアはさっさと用事をすませて踵を返した。
気にはしないけれど、それでもあこがれはする。
私もいつか、誰か隣にいてくれてその人から花束なんてもらったりすることがあるのかしら。
想像をめぐらせてみても現実問題ピンとくる相手もいないし、経験もないから具体的なイメージに結び付かないのが悲しい所だった。
そんなこんなで乏しい想像力を働かせている道すがら何か黒いものにふさがれたと思ったらそれは瞬く間に人間の男の姿になった。
「ケ、ケルピー!」
見るものを虜にする絶世の美青年が目の前に立っていたけれど感動というよりかはめんどくさい相手が降ってわいたというくらいの気持ちしかリディアには持ち合わせていなかったのだけれど。
「よう」
「よう、じゃないわよ。こんなところで誰かに見られたらどうするの」
「こんな町はずれにだれもこないさ」
失礼な。一応通いの家政婦さんだって来てくれているしたまには依頼人だって来るんだからとリディアは口の中でもごもごと反論をしてみた。
「何の用なのよ」
「そうつんけんするなって」
このケルピーは縁あって知り合ったのだが、人間が珍しいのかこうしてときどきやってくるようになった。
けれどいくら親しいとはいえアンシーリーコートの部類に入るのでリディアとしてはいつも警戒しているのが、相手は一向に気にしていない様子だ。
「ほら、これやる」
そうやって渡されたのはどこから取ってきたのか一輪の花だった。
「な、なにこれ…」
どうしてケルピーが花を渡すのだろう。
まさか新手の駆け引き方法だろうか。
「ちょ、いらないわよっ」
「ん?どうして」
「だってもらう道理がないもの」
本当にさっぱり意味がわからない。
「今日は人間の男が女に贈り物をする日だろう?」
そう言ってケルピーはにやりと笑った。
たしかにそうだけど、どうしてケルピーが知っているんだろう。
「どうして?」
「さっき通りかかった人間が花束を落として、なんだこれはって聞いたらそう言ってたぞ」
リディアはくらりとした。
それって馬の姿で通りかかりの男性の前に現れたってことだろうか。
「で、一本落としていったから」
それでちゃっかり拾ってご相伴にあずかったというわけか。
そんないわれを聞くと素直に受け取ってしまっていいものか、持ち主に返しに行ったほうがいいものか悩んでしまう。
「なんで私に…」
「なんでって、人間は今日花を渡すんだろう?俺もちょうど人間の女で知っているのがいたし」
ちょっと真似してみようと思ったということか。
妖精の気まぐれ。
「じゃ、じゃあ他に意味はないのね」
「意味?」
リディアのつぶやきにケルピーは首をかしげた。
それにしてもまさか妖精から贈り物をもらうとは。
しかも妖精にはなんの関係もないバレンタインの花。
リディアはおかしくなってクスリと笑った。
「なに笑ってんだ?」
不思議な顔をしてケルピーはリディアの様子をよく見ようとしたのか覗き込んでくる。



なんてことがあったと思いだしたのはロンドンのリディアの自宅がバラの花で埋めつくされようとしているからだった。
まさか私にバレンタインの贈り物をしようとか思う物好きが現れるとは。
しかも相手は財力も兼ね備えた貴族なわけで。
「おい、リディア!あの伯爵に言っておけ。ものには限度があるってことを」
濃いバラの香りに包まれた部屋のなかで大輪の薔薇に埋もれるようにニコが声をあげた。
「…分かっているわよ」
普段からリディアのことを好きと言って憚らない美貌の伯爵はさきほど大量のバラの花束といっしょにカールトン邸へやってきた。
曰く、「君への愛情を表現しようと思ったら花束なんかじゃ足りなくてお店のバラをすべて買い取ってしまったよ」とのことだった。
いつか私にも人間の男性から花を贈られることがあるのかしら…。
あの頃の自分に言ってやりたい気分だ。
限度を知らない超自信家の口説き魔から嫌がらせのような大量の花を押しつけられているわよ、と



あとがき
ひさしぶりに伯爵と妖精二次です
バレンタイン記念ってことで、どうしてもケルピー×リディアが書きたかったのでこうなりました。
欧米では男性から女性に花やお菓子を送ったりする日ですよね
このころのイギリスにバレンタインの習慣があったとかなかったとか、そういう突っ込みは無しな方向でお願いします
書きたいものは書きたいの~っていう気持ちで書いたので

あとエドガーのバレンタインエピソードも入れたかったので最後書いてみました
エドガーなら絶対このくらいのことはしそうだなって妄想が膨らんで
リディアがわなわな震えて「かえれー」とかいいそうです
怒ったリディアちゃんって最強に可愛いよね

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