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2015.10.15 18:13

最近のクロウの楽しみといえば妻として娶ったユナイアの王女、シレイネ観察だ。
とはいっても別に本物のシレイネ観察ではなく身代わりとしてやってきたフェル観察というほうが正しいのだが。
とくに気入っているのは彼女との食事だ。


彼女は本当に面白い。
というかあそこまで本音がダダ漏れでよく身代わりがばれていないと思っているな、と感心してしまうほどだ。
今日も運ばれてきた料理を目にするなり表情がぱあっと明るくなった。
まるで十日間くらい断食していたのかと思うくらいのキラキラ加減なのだ。
クロウは思わずふっと息を吐いた。
こんな素のままの表情を無自覚とはいえこちらに見せるとは。
せっかくの面白い食事時の風景に水を差しては悪い、というかこの場合は観察している方が面白いのだが、ので咳払いをしてごまかした。
フェルの方はというと皿の上に載っている羊肉にほうに気を取られているせいでこちらの視線など全く気付いた様子はない。
普段はあれだけ機敏に反応を示すのに、そんなにも羊のほうがいいのか。
とかなんとかちくりと思ってしまうくらいの熱視線を彼女は肉に向けている。
その瞳は爛々と輝いており、おそらくはどこから食べようか迷っているのか思案下だ。
昔人の口の中にいきなり肉を突っ込んできたときの勢いはどうした。
もっと豪快に食べればいいのに、とつい余計なことを考えてしまう。
頭の中で思っていてもクロウはそれをおくびにも出さずに先に食事を進めているのだが。
「シ…」
一向に微動だにしないフェルに若干痺れを切らして、クロウが口を開きかけた直後に意を決したのかフェルはついにナイフを肉に入れた。
一応身代わりとして最低限の躾を受けてきているらしく、その身のこなしは優雅なものだけれどフェルの瞳に宿った光はまさしく獲物をかる狩人のそれだった。
「ん…っ」
口に含んだ瞬間にため息が漏れた。
手を頬に添えて幸せそうに頬張っているその様子はよくいう誕生日の日にケーキを頬張る子供のようだ。
自分にそんな可愛い思い出なんてないのだけれど、部下の誰それがそんな話を世間話でしているのが耳に入ってきたことがあった。
おそらくこんな風にとろけるような笑みを浮かべて思い切り頬張っているんだろう。
もきゅもきゅとゆっくりと咀嚼する様子も可愛い。
食事なんてとりあえず何かしら口に入れて生命を維持するだけのもの。
そんな風に考えていたクロウからしてみたらフェルの体の底からあふれ出るような幸せオーラをまとった食事風景は新鮮そのものだった。
クロウの口元も自然に緩んでしまう。
まったく、側にいて飽きない。
彼女との食事が楽しくて、今までは仕事一辺倒だったのに今では夕食時までになるべく一日の仕事を終わらせようと調整までしているのだ。
自分の代わりに身がにわかには信じられない。
美味しそうに、幸せそうに食事をするフェルを見ていたい。
この笑顔をずっととどめて置きたい。
「な、なんですの旦那さま。さっきからにやにやとして、気持ち悪いですわよ。まさかお腹がすきすぎて庭に生えていたキノコをモノはためしとうっかり食べてしまったら実はそれが笑い茸だったなんてことだったのでなないでしょうね」
「まさか。気のせいだ」
さきほどからじぃっと視線をやりすぎたせいか、さすがにフェルの方も自分に注がれるクロウの双眸に気がついたらしい。
それまでのゆるんだ表情から一転してクロウの方を睥睨する。
というかその妙に具体的すぎるたとえ話は何だ。
「そ、そうですの。それならば別にいいんですけど」
つん、としました顔をつくってフェルは食事を再開した。
澄まし顔を取り繕ったものの、再開された食事を前にそれはすぐにがらがらと崩壊するのだが本人は気が付いていない。
肉に夢中になっていても一応こちらのことも気にはしているんだろうか。
それにしても夫婦の会話が笑い茸だけとはやっぱり面白くない。
目の前のフェルはようやく肉を食べきって満足そうにほう、っと息を吐いた。
ソースだってパンですくってきれいさっぱりと食べきった様は見事の一言だった。
というかここまで皿を真っ白な状態にするくらいの食べ方は一種異常なくらいだ。
まるで皿についた汚れを根性で落としてやったくらいのぴかぴかさだ。
きれいにした皿を側仕えの者たちが片付けて、そのすぐ直後にデザート皿が運ばれてきた。
今日の品は干した杏をたっぷりと使ったケーキだった。
つけあわせのクリームもたっぷりと乗っているそれはクロウというよりかは奥さまの為に作られたかのような女性受けする一品だった。
フェルが城内で受け入れられていることはいいことだ。
美味しいと素直に表現をして、厨房の者にも伝えておいてねと愛らしく小首を傾げればたいていの使用人たちはシレイネの虜になるのだから。
現にクロウ一人きりの食事の際には今までこんな風に手の込んだデザートが毎夕食後に提供されることなどなかったことだ。
クロウはお茶と一緒にケーキを流し込んでふと思い立ったように顔を挙げた。
そういえば今日は雑事に追われてフェルとあまり触れ合っていなかった。
毎日何かしらフェルをかまい倒してその反応を楽しんでいる身としてはいささか物足りない。
さて、どうしたものか。
ちなみに向かいに座っているフェルはケーキを目の前にしていまだに微動だにしていない。
どこから食べるか考えているのか、クリームの盛り盛りさ加減に感動して動けないのか。
「なんだシレイネ、腹いっぱいなのか」
「えっ?」
「だったら俺が食ってやる」
そう言ってクロウは自分の手持ちのフォークでケーキを突き刺しそのまま口に運んだ。
「あーーーーーっ」
一瞬の出来事に反応が遅れたフェルはというと一呼吸置いて思い切り叫んだ。
「ちょ、あ、あなた何していますの?そ、それは私のケーキですわよ」
「だがいつまでも微動だにしなかったからてっきり肉を食ってもうお腹いっぱいなのかと思って。親切心を働かせたんだが」
「そ、そそそんな親切心入りません!毒龍公のくせになに言っていますの?そもそもあなたの辞書に親切なんて言葉があったのが驚きです」
「なんかどさくさにまぎれてものすごくひどいことを言われているような気がするが」
「ひどいのは旦那さまですわっ!わ、私楽しみにしていましたのにっ」
涙を浮かべた瞳を向けられるとさすがにやりすぎたかと罪悪感がもたげる。
しかも一部始終を見ていた使用人たちも心なしかクロウを非難するような表情を作ってことのなりゆきを見守っている。
なるほど、この状況だとクロウのほうが分が悪い。
「せっかくのケーキ…」
「わ、分かったって。明日厨房に言ってもっとすごいの作ってもらうから」
その言葉には反応せずにフェルは次の瞬間勢いよく立ちあがった。
「……旦那さまなんて、大嫌いですわ。人のデザートを横取りするような横暴な人、さっさと離婚してやります!」
そう断言してフェルはそのまま食堂を後にしてしまった。
取り残されたクロウはというと妙に冷たい使用人たちからの視線を一身に浴びる羽目になったのだった。



☆★☆☆★☆あとがき☆★☆☆★☆☆★☆
ビーズログ文庫人気シリーズ「仮花嫁のやんごとなき事情」にはまっておりまして
初めて二次小説を書いてみました
先にピクシブのほうでアップしてあったのをブログにも再掲
旦那様のドSっぷりがなんとも魅力的なこのシリーズ
私が書くとただのいじめっ子に
こんどは召使いフェル×クロウで書きたいな
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