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2007.10.06 10:44

寮に入っていると日常品を手に入れる事がままならない。
勿論インクやノートなどといったものではない。お菓子や酒その他色々大人には知られたくは無い日常諸々の品物のことだ。
だからたまに届けられる実家からの差し入れはとても重宝する。
しかし、今回は何時もと少しだけ違った。
食料などの差し入れと一緒に入っていたものは見慣れない容器。
その中に入っていたものは普段慣れ親しんでいるものとは違った香りのする茶葉。
―珍しい東洋のお茶が手に入ったので差し入れします―
そんな手紙と共にジェラルドは実家からの差し入れを受け取った。



「待ってよ~、エリカったら!」
男子校の廊下に華やかな声が響く。一風変わったこの学校の風景も見慣れれば日常だ。
ジェラルドはぼんやりとそんな女生徒が行き交う様子を眺めていた。
昨日の荷物の中身をみて思いついたこと。
けれども実行するには相当の勇気と気合が必要だ。
「そんな風に眺めているだけじゃ何時までたっても実行できないよ。」
ジェラルドはちらりと友人を横目で見やる。
何も行ってないのに実家からの荷物の内容を伝え聞いただけでこの友人はジェラルドが何を考えたかがわかってしまうらしい。
「簡単だよ。ちょっと言伝でも頼んで何時もの部屋へ招待するだけだ。」
何時もの部屋とは監督生の部屋。
「ちょっとまて、俺はまだエリカを誘いたいだなんて一言も言ってないぞ」
「でも頭の中では考えていたわけだ。」
ユージーンの言葉にジェラルドは渋面をつくる。この友人は何もかもお見通しだ。
あいつの笑った顔―
と一緒に浮かんだのははかなげな印象を持つロジャーと一緒にいるところ、それだけでジェラルドは何か面白くなく一層渋面を深めたのだった。


「で?なによ、用って。次は作法の授業なんだからいそいでるの」
廊下で呼び止めたはいいがその後の台詞がでてこない。こんなときユージーンならどうする
エリカは本当に急いでいるのか進行方向を見やりながらあせりをみせている。
時間だけが過ぎていく。放課後夕食前に監督生の集まる部屋へ誘うだけだ何をためらう必要がある。
「もう、何もないなら行くわよ。」
そういってエリカは早々に立ち去ろうと踵を返しかける。
「今日の夕方、何時もの部屋へこい!」
「なっ、どうして私があなたに命令されなきゃいけないのよ!もうファグでもなんでもないでしょう」
ジェラルドの言葉にエリカが語気を強め反発をする。
そうするとジェラルドも自然と言葉が強くなってしまう。もともとの性質がでてしまうのだ。
「なんでもだ。俺が来いって言ってるんだ。絶対に来いよ、いいな。」
話は終わったとばかりに一方的に切り上げてジェラルドはその場から立ち去った。

先ほどの言葉を反芻するとどうしても腹が立って授業に集中できない。
お陰でエリカは途中何回も教師から小言を言われてしまった。
特に外国から帰ってきたエリカにとってはイギリスの淑女教育の中で行われる作法はなれないことも多く、集中していないと失敗することも多いのだ。
それなのに、直前のジェラルドの言葉。
そりゃぁ急いでいたからエリカだって言葉が強くなっていたかもしれないけれど、いやその前に。
どうして彼に命令されなきゃいけないのだろうか。少し前に起こった事件でファグだって解消されたはずなのに。
「さっきから眉間にしわが寄ってるわよ。女の子なんだからそんなところに寄せちゃダメよ。とれなくなっちゃうわよ。」
エリカの様子を心配してかドロシーが声を掛けてきた。
眉間に指を刺してにこやかに笑顔を浮かべている。
笑顔笑顔といいたいらしい。
「え、そんなにも寄ってた?だってねさっきジェラルドったらまた喧嘩売って来るんだもん」
「なぁんだ。そっち絡みか。だったら心配して損しちゃった。」
「なんだじゃないわよ!もう。信じられないアイツ~~」
ドロシーにとってエリカとジェラルドの諍いは日常茶飯事だからいまさらな出来事だったが当のエリカにとっては現時点での最重要事項だった。
何しろ一方的に来いと命令されたのだから。
こうして授業が終わっても気になるくらいには。
そう、ジェラルドが一方的に宣言したのだから別に行かなくたっていいではないか。
YESと返事はしていない。だからあとで何を言われようともいくらでも言い逃れ、いやはっきりと反論はできる。
では何をこんなにも悩んでいるんだろう。
こうしている間にも時間だけは経っていく。
気がつくと部屋の中はエリカが思うよりも赤く染まっていた。
「ごめん、ドロシーちょっと出かけてくるわ」
「え、ちょっと。エリカ」

ドロシーの驚いた声を後ろに勢いよく扉を開き廊下を走る。
自分でもわからないがとにかく気になるんだったら確かめないと。そんな気持ちでエリカは走っていた。
そうだ、喧嘩だったら思い切り買ってやる。あとで逃げたなんて言わせないんだから。
そんな気持ちの表れか指定された部屋の扉を空ける音がいつも以上に大きかった。
「遅いぞ!エリカ。」
「あら、勝手に命令しておいて私はあのとき行くともなにも行っていないわよ。だけど敵前逃亡だなんて思われたくなかったから仕方なくきたの。」
とエリカが勢いよくジェラルドにまくしたてると彼の隣にいた男性が口元を隠しながら勢いよく噴きだした。
「あぁジェルったら、一体どんな言葉で彼女を誘ったんだい?」
「なっ。俺はいたって普通に言ったぞ。それをこいつが勝手に勘違いしたんだ」
なにやらジェラルドが慌ててユージーンに弁解をしている。どうやら話からして喧嘩を売るではなかったらしい。
「なによ、来い!だなんて横柄に言い放つんだもの。」
「あぁそれならジェラルドの言い方に問題があったね。実はね今日君を招いたのはお茶がしたかったからなんだ。」
優しげにユージーンに着席を促されエリカはいまいちよくわからないといった表情で椅子に腰をかける。
「お茶?またどうして」
「それはね。ほらジェラルド」
ユージーンに先を促さればつが悪そうな表情のままジェラルドがテーブルの上に乗っている陶器を指し示しながら答えた。
「実家から差し入れが届いたんだ。そんなかにその・・・東洋のお茶が入ってて・・・。おまえがこういうの好きだろうと思って呼んでやったんだ」
呼んでやったって・・・、一瞬エリカはその言葉に応戦してやろうかと思ったがフイっと横を向いたジェラルドの顔がどことなく赤いのに気がついて止めた。
ひょっとして照れ隠ししてるの。
「もうジェルは素直じゃないなぁ。エリカが懐かしんでくれると思って真っ先に考え付いたくせに。」
「うっせ。だまってろ」
相変わらずそっぽを向いたままだが先程より顔が赤く染まっているのは気のせいではないだろう。
言葉が足りないせいで分かりにくいやつだけれどもエリカのことを気にかけてくれているのだ。
「有難うジェラルド。誘ってくれて」

結局届いたお茶はエリカの故郷のものではなかった。
陶器の入れ物から出てきたのはエリカの故郷の隣の国のもの。
長い外国生活のお陰で何度か目にしたことのあるそのお茶をエリカが淹れ異国の香りが鼻腔をくすぐる。
「これは清のお茶ね。でも懐かしい香りがする。母様にも入れてもらったことがあるのよ。昔隣の国のお茶よって買ってきてくれたことがあってね。」
懐かしそうに目を細めるエリカ。
異国のお茶は普段ジェラルドが慣れ親しんでいるものとは違った味だけれど少しだけエリカに近づけた、そんな気がするどこか懐かしい味だった。



★★★★ あとがき ★★★★   ★★   ★★★
谷瑞恵さん作品、丘の上の小さな貴婦人の二次創作です。
書いちゃいました。不器用なジェラルドが書きたくって。
寄宿舎もの。しかも好きな子に不器用でついいじめちゃうってまさに王道。
伯爵と妖精とは違った魅力のある素敵な作品です。
なので書いちゃった。
もう!!ジェラルドったら!!なんてみていて歯がゆいの!
っていう作品なのでこっちでもそんな彼を少しでも出せたらなぁって思いで書きました。
設定とかかなり適当に書いちゃったのですみません間違ってたら。

早くこっちの続編も出ないかなぁ~~

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テーマ : 自作小説(二次創作) - ジャンル : 小説・文学

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